細部にまでこだわった改良
10月上旬、私たちは観光旅行のため、ビントゥアン駅(ラムドン省)からダナン市までの切符を予約しました。運賃はバスの約2倍ですが、列車での移動はより快適で安全です。
車窓から田園風景を楽しめることは鉄道旅の魅力であり、乗客は車両の窓越しに美しい景色を堪能できます。鉄道の公式サイトから予約したところ、ほとんどの席が埋まっており、あまり座席の選択肢がありませんでした。
ファンティエット区からダナンまで車で移動する場合、14時間以上も座りっぱなしになり、列車のように自由に動き回ることはできません。長距離バスはトイレ休憩などが取りづらく不便で、道路沿いの休憩所での食事は高価で衛生的でないこともあります。
ビントゥアン駅では、駅構内で多くの乗客が列車を待っているだけでなく、駅の外でもタクシーが列をなして乗客を迎えていました。
タクシー運転手のグエン・タイン・チュン氏は「ここ2年で列車の利用者が大幅に増え、地元の経済も活性化しています。乗客の多くは観光客や高齢者です」と語りました。
車内に乗り込むと、どの車両も満席でした。寝台車の細い通路は、乗客が流れゆく景色を眺める絶好の場所となっていました。各車両の内部には色鮮やかな装飾や壁画が施され、温かみのある居心地のよい雰囲気が漂っていました。内装のデザインは列車ごとに異なり、花柄の模様などで個性が表現されています。トイレには脱臭用の空気清浄機も設置されていました。
車内の設備は飛行機に匹敵するほど充実しており、読書灯や電源コンセント、USB充電ポートのほか、無料の冷温水サーバーも備えられていました。乗客は景色を眺めたり、写真で旅の思い出を残したり、安心して電子機器を充電したりしながら、快適に過ごすことができます。車内は明るく和やかな雰囲気に包まれていました。
特に外国人観光客の間で、ベトナムの鉄道旅行の人気が高まっています。食事に使う箸やスプーン、カップなどの食器類はすべて衛生面に配慮して使い捨てになっています。温かい食事は約4万ドンで提供されており、同程度の料理をバスの休憩所の食堂で頼むと6万ドンほどになります。長年にわたる投資と革新を経て、ベトナムの鉄道は乗客の体験を大きく向上させています。
列車に「4つ星評価」を付けたダナン市在住のグエン・ティ・ゴック・アインさんは「毛布や枕は清潔なナイロン袋に包まれていて、トイレも臭いがなく清潔です。だから私は再び鉄道を利用するようになりました。4~6人で隣同士の席を取るには1か月前、祝日なら2~3か月前の予約が必要です。列車はバスや飛行機と違い、荷物制限が厳しくなく、生鮮食品や特産品など大きな荷物も持ち込めます。多くの人が手作りの弁当を持参して車内で楽しんでいて、それも列車旅の魅力のひとつなんです」と語りました。
絶景の海岸ルート
列車に揺られながら、私たちはトゥイフォン村(ラムドン省)に広がる美しい海岸線を眺め、線路沿いに広がるエビ養殖池や塩田を楽しみました。カインホア省に入ると、巨大な風力発電機がそびえ立ち、長い砂浜が広がります。ダクラク省では果てしない水田が続き、曲がりくねった海岸道路からはザライの湾が垣間見えました。クアンガイでは高速道路が雄大な山々の間を縫うように並行して走っていました。そして、ダナンに到着すると、乗客は美しい海の景色や近代的な都市、広々とした大通りに迎えられました。
ベトナム鉄道運輸株式会社によりますと、プレミアム観光列車「S Journey」は鉄道業界と旅行会社の共同プロジェクトで、ニンビン、フォンニャ・ケバン洞窟、古都フエ、ホイアン旧市街、カインホア、ファンティエットなど、自然や文化遺産で知られる観光地を結んでいます。車内では快適な寝台キャビンや上質な食事、プロのバーテンダーによるバーサービス、そして観光名所での質の高い停車体験など、贅沢な旅を楽しむことができます。
 ベトナム鉄道運輸株式会社は現在、ハノイ〜ダナン路線の開発にも力を入れており、車窓からの美しい景観とともに、主要観光地に停車する旅を提供しています。たとえば、ニンビン駅ではチャンアン、ヴィン駅ではクアロー、ドンホイ駅ではクアンビン省のティエンドン洞窟をはじめとする洞窟群、そしてフエ駅では古都フエの王朝の風情を楽しむことができます。一方、サイゴン〜ダナン路線では、ファンティエット、カインホア、ザライ、ダクラクなど、人気観光地に近い区間を走行します。
同社の担当者によりますと、もう一つの目玉は「中部遺産連結列車」で、フエ〜ダナン間を運行し、ランコー湾やハイヴァン峠など、旅行ガイド『ロンリープラネット』でも「世界で最も美しく、乗る価値のある鉄道路線の一つ」と紹介された絶景を堪能できます。車内ではフエの伝統音楽の演奏や郷土料理も楽しめます。
最近では、全長7キロメートルのダラット〜チャイマット観光列車が再び運行を開始しました。この路線は、かつてのベトナム登山鉄道システムの一部であり、スイスと並んで世界に2つしか存在しない貴重な鉄道として知られています。
ベトナム鉄道運輸株式会社は、ハノイ~ダナン、サイゴン~ダナン路線の高品質列車や、「ダラット・バイ・ナイト」「ヘリテージ・ジャーニー」「レッド・フランボワイヤン」など新たなテーマ観光列車の拡充も計画しています。鉄道業界はファンティエット、カインホア、ダナン、フエなど主要観光地への路線開発や、列車全体のチャーターや個室車両の貸切サービスなど、特別な旅行体験の提供にも取り組んでいます。
これらの取り組みにより、鉄道事業の業績は向上し、ブランドイメージの再構築やベトナム鉄道業界の評価向上につながっています。新たな顧客層を惹きつけ、独自性と高品質を兼ね備えた観光商品を生み出しています。