省や市の合併が観光産業の新たな成長エンジンに

省や市の合併を受けて、観光業界は「地図の描き直し」を迫られています。開発空間や観光商品、ブランドの再構築が求められており、新たな成長の原動力を生み出すことが急務となっています。

チャンアン(ニンビン省)を訪れる観光客(写真:スアン・ラム)
チャンアン(ニンビン省)を訪れる観光客(写真:スアン・ラム)

ベトナム国家観光総局のデータによりますと、2025年の最初の9か月間で、ベトナムの観光業は印象的な数字を記録しました。外国人観光客は1,540万人を超え、国内観光客は1億1,900万人に達し、観光収入の総額は推定で794兆ドンとなりました。

旧ニンビン省、ハナム省、ナムディン省の3省が合併したことにより、新たに誕生したニンビン省は、紅河デルタ地域における成長の中核となりました。2025年の最初の9か月間で、同省は延べ1,670万人以上の観光客(うち外国人観光客は162万人以上)を迎え、観光収入は推定で約17.9兆ドンに達しました。これは、2024年の同時期と比べて大幅な増加となっています。

現在、同省は国際観光センター、9つの観光圏、3つの戦略的空間(遺産・文化・信仰、生態・海・河口、伝統工芸村・創造的コミュニティ)を含む観光空間の見直しと再編を完了しました。その上で、北部ルート(バイディン—ヴァンロン—タムチュック—フオン寺—ズイティエン)、中央ルート(ホアルー—チャンアン—フーデイ—チャン寺—ケオ寺—コーレ)、沿岸ルート(キムソン—ファットディエム—ハイティン—ハイティエン—ザオニン—ザオトゥイ)の3つの観光ルートを設計しました。

これは、「新たな観光地図」が単なる境界線の変更にとどまらず、観光商品や空間の再構築を伴うものであることを明確に示しています。しかし、ニンビン省は、合併後に観光産業が直面しているさまざまな課題も認識しています。

ブイ・ヴァン・マイン観光局長は、合併後の行政区画の変更により、デジタル地図やスマート観光地図の更新、観光地やサービス施設の統合にも支障が出ていると述べました。同局は、関係部門、各地域、メディア機関、旅行業者と緊密に連携し、地図から観光商品やサービスシステムまで一貫性と連携を確保しています。新たな観光地図が完成すれば、ニンビン省が国内観光地図上で魅力的な目的地としての地位を高める重要な基盤となり、持続可能な地域間連携の促進にも寄与すると期待されています。

合併後の行政区画の変更により、デジタル地図やスマート観光地図の更新、観光地やサービス施設の統合にも支障が出ている。観光局は、関係部門、各地域、メディア機関、旅行業者と緊密に連携し、地図から観光商品やサービスシステムまで一貫性と連携を確保している。新たな観光地図が完成すれば、ニンビン省が国内観光地図上で魅力的な目的地としての地位を高める重要な基盤となり、持続可能な地域間連携の促進にも寄与すると期待されている。

ブイ・ヴァン・マイン ニンビン省観光局長

南部では、ホーチミン市がビンズオン省、バリア=ブンタウ省と合併した後、規模・観光商品ともに目覚ましい成長を遂げています。過去9か月間で、ホーチミン市は580万人以上の外国人観光客と2,910万人以上の国内観光客を迎え、総収入は推定で184兆6,000億ドンを超えました。

合併以降、ホーチミン市観光局は、各部門や関連機関、地域、企業と連携して、多くの観光ルートや目的地、特色ある観光商品の調査・設計・開発に注力しています。また、既存商品の再評価と新商品の開発方針の策定にも取り組み、夜間の観光振興に力を入れています。具体的には、文化・スポーツ分野での官民連携(PPP)を試行し、夜間の博物館ツアーやアートパフォーマンスの開催、水上観光の開発検討などを進めています。これらは、合併後の利点を最大限に活かす創造的な取り組みであり、「ホーチミン」の名を冠する同市の国内外の観光市場に大きな魅力をもたらしています。

全国で二層制地方行政モデルが導入されて以来、クアンニン省は行政区画の再編に合わせた計画的な観光開発で先進的な地域として台頭しています。文化・スポーツ・観光局の報告によりますと、2025年最初の9か月間でクアンニン省は1,711万人の観光客(うち国際観光客は320万人超)を迎え、観光収入は44.25兆ドンに達しました。文化・スポーツ・観光局のグエン・ラム・グエン副局長によりますと、行政単位の再編は省内の観光資源に大きな変動をもたらさなかったと述べました。

しかし、合併後の各地域が潜在力を適切に評価され、それぞれにふさわしい活用方針が定められ、各行政区や特別区域の強みと連携するために、クアンニン省文化・スポーツ・観光局は2025年8月18日付で計画289/KH-SVHTTDLを発出しました。この計画では、全ての観光地やスポットのインフラやサービスの調査・評価を行うとともに、データの整理と観光資源のデジタル化を進め、電子地図システムへの統合を図っています。グエン副局長は「これは、省が管理や観光地のプロモーションに役立つ、新しく現代的で直感的な観光マップを作成するための基盤だ。同時に、サービスの質向上やクアンニン観光地のイメージ向上にも寄与する要素となる」と強調しました。

また、同省はハロンカーニバル2025、熱気球フェスティバル、ハロンマラソン、ウルトラトレイルイエントゥなど、一連の文化・スポーツ・観光イベントを開催しています。このような定期的なイベント運営を通じて、観光地の競争力は行政区画の変更だけでなく、データ管理能力やイベントの企画運営、そして観光体験の刷新力により左右されることを示しています。

以上の取り組みから、各地が合併後の適応に向けて「観光地図の描き直し」に努力していることがうかがえます。しかし、これは単なる行政区画の調整や名称変更にとどまらず、データや商品、インフラ、そして人材に至るまでの包括的な再構築プロセスです。ベトナム国家観光総局のハ・ヴァン・シエウ副局長は、行政区画が変わっても従来のやり方を続けるだけでは、合併は「古い考えに新しい服を着せただけ」に過ぎないと強調しました。重要なのは、計画の考え方を革新し、回廊や連結軸を明確に位置付け、制度改革を推進し、内外のあらゆる資源を最大限に動員して発展の原動力を創出することだと述べています。

行政区画が変わっても従来のやり方を続けるだけでは、合併は「古い考えに新しい服を着せただけ」に過ぎない。重要なのは、計画の考え方を革新し、回廊や連結軸を明確に位置付け、制度改革を推進し、内外のあらゆる資源を最大限に動員して発展の原動力を創出することだ。

ハ・ヴァン・シエウ ベトナム国家観光総局副局長

ベトナム観光協会のフォン・クアン・タン副会長は、「合併後の観光地管理にはより高い能力が求められる。もう一つ重要なのは観光商品の連携だ。一つの場所の質が良くても、同じ省内の別の場所で質が低ければ、観光客に悪い印象を与えてしまう。観光ブランドは名前だけでなく、質と体験を基盤に築かなければならない」と指摘しました。

現状を踏まえると、今後の課題解決には、データのデジタル化、観光商品の再編成、インフラ投資、人材育成、地域観光地管理メカニズムの確立という柱の同期的な取り組みが必要です。これは、2021~2030年の観光体系計画(2045年までのビジョンを含む)を承認した決定第509/QD-TTgおよび、同計画の実施計画を公布した首相決定第382/QD-TTgに基づいたものでもあります。これらを適切に実行すれば、2025年までに外国人観光客2,500万人以上、国内観光客1億5,000万人以上の受け入れ目標を完全に達成できるだけでなく、ベトナムが地域的、国際的に魅力ある持続可能な観光地となる基盤を築くことが可能となります。

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