保健省の報告によりますと、2021~2024年の期間におけるベトナムの出生時性比は、女児100人に対して男児112人となり、自然な均衡とされる104~106を大きく上回りました。現在も北部および北中部の複数の省では非常に高い水準が続いており、一部の地域では女児100人に対して男児が120人に迫っています。一方、南部の省・市では105~108の範囲にとどまっています。この不均衡が是正されなければ、2034年には結婚適齢期の男性が約150万人余剰となり、2059年には約180万人に増加する可能性があると予測されています。
人口研究所の元所長であるグエン・ディン・ク教授は、出生時の性比不均衡は静かに進行する一方で、長期的には国家の安定を脅かす深刻な問題だと警鐘を鳴らしています。この問題は個々の家庭にとどまらず、将来にわたる社会構造や人的資源の質にも影響を及ぼします。息子が祖先祭祀を担い、家名を継ぎ、家系の社会的地位を維持する存在だとする考え方など、根深い社会的価値観や信念が、ベトナムの人々や家庭、氏族の意識、文化、慣習の中に深く浸透してきました。こうした価値観は意図せずして、男性の過剰、女性不足、ジェンダー不平等の拡大、児童婚、人身取引、さらには人口構造への悪影響といった深刻な結果を招いています。
国連人口基金が2023年に実施した調査によりますと、男性の60%以上が「少なくとも一人は息子が必要」と考えており、女性の38%が「息子を産まなかった場合、夫の家族からプレッシャーを感じる」と回答しています。さらに妊婦の27%が、性別の告知が禁止されていることを十分認識しながらも、胎児の性別を尋ねた経験があると答えています。
保健省人口局のファム・ヴー・ホアン副局長は、多くの家庭が本来は男女両方の子どもを望んでいるとした上で、2人までの出産を計画する場合、第一子が女児であった場合に男児を選択しようとする傾向が著しく高まると指摘しました。
政治体制全体を挙げた継続的な取り組みにもかかわらず、2016年以降、ベトナムでは出生時性比が安全水準に戻った年は一度もありません。このため専門家や人口法の起草委員会は、出生時の性比不均衡を、最も深刻な4つの人口問題の一つと位置づけ、最高レベルでの政策介入が必要だと判断しています。
これまでの人口法令では、出生前の性選択を禁止する規定はあったものの、具体的な管理措置がなく、罰則も比較的軽かったため、法律の抜け道を利用した行為が横行していました。新たに制定された人口法では、保健省の規定に基づき遺伝性疾患の診断・治療に必要な場合を除き、医療従事者が胎児の性別を告知・通知・開示した場合、免許停止処分が科されます。
保健省人口局長のレ・タイン・ズン氏は、人口法は性選択的行為を根本から是正するための包括的な法的枠組みを整えたと強調しました。法律が厳格で、かつ実効的に執行されてこそ、出生時の性比は自然な水準に戻るとしています。行政措置だけでなく、時代遅れの意識を改めることも不可欠であり、若者や社会全体を対象とした、踏み込んだ啓発や行動変容の促進が強く求められると述べました。
人口問題の専門家らは、出生時の性比不均衡を是正するには、依然として性別に偏った価値観を持つ人々に直接働きかける必要があると指摘しています。広報活動はマスメディアに頼るだけでなく、地域社会や家庭、村落にまで浸透させなければなりません。その一方で、超音波検査施設や民間クリニックに対する監査の強化、胎児超音波情報への電子的監視システムの導入、重大な結果をもたらす性別告知には刑事訴追、娘の平等な相続権を法律や地域慣行で保障することも重要だとされています。さらに、性比不均衡が深刻な地域での「出生前性別選択のない村」といった地域モデルの拡大や、世代間のジェンダー平等クラブの普及も求められています。