タン大使は、今回の訪問が二国間関係のみならず、ベトナムの中東地域全体に対する外交方針を再確認する上でも極めて重要な意義を持つと強調しました。
今回の外交活動は、首相が2024年に湾岸諸国3か国を訪問した流れを引き継ぐもので、ベトナムが中東地域に向けた外交戦略の実施に強い決意を有していること、そして新たな状況下での国際社会への参画に関する党中央決議第59号(NQ/TW)の早期実現を目指していることを示しています。ハイレベルの外交交流を通じて、両国は友好関係の強化、政治的信頼の深化、市場の拡大、そして未開拓の協力分野の開拓に取り組んでいます。
大使によりますと、今回の訪問はベトナムの高位指導者による16年ぶりのクウェート訪問であり、両国が2026年1月に外交関係樹立50周年を迎える準備を進めている時期に実施されると説明しました。その上で、今こそ両国が二国間関係を強固かつ深化させ、新たな高みに引き上げ、両国の発展目標に実質的な貢献を果たす好機であると強調しました。
クウェートは現在、湾岸協力会議(GCC)の議長国であり、政策の見直しを進める中で、ASEAN加盟国を含むアジア諸国への関心を一段と高めています。こうした状況から、ベトナムとクウェートは、ASEANとGCCの地域間協力を促進する橋渡し役を果たすことができるとされています。同時に、ベトナムは、GCCとベトナムの自由貿易協定(FTA)交渉の早期開始に向けて、クウェートがその役割を発揮することにも期待しています。
訪問中、チン首相はクウェートのメシャル・アルアハマド・アルジャーベル・アル・サバーハ首長、サバーハ・アルハーレド・アルハマド・アル・サバーハ皇太子と会見し、アフマド・アブドゥッラー・アフマド・アル・サバーハ首相との会談を行う予定です。また、複数の閣僚や主要経済グループの幹部とも会合を持つ見通しです。双方は、半世紀近くにわたる友好・協力関係の進展を振り返るとともに、今後に向けた方向性や具体的な協力措置について意見交換し、将来の協力の枠組みをより広く描いていく方針です。
今回の訪問で注目される行事の一つが、チン首相のクウェート外交学院での政策演説です。この中で首相は、ベトナムの着実な社会経済発展を強調するとともに、クウェート、そして中東地域全体との多面的かつ緊密な協力を、長期的かつ戦略的な視点で進める上での同国の方針、政策、優先事項について力強いメッセージを発信する予定です。
二国間関係についてタン大使は、クウェートは現在、ベトナムへの投資総額が最大の中東諸国であり、中でもクウェートが35億ドルを出資しているギーソン製油・石油化学コンビナートが代表的であると述べました。
貿易面では、2024年の二国間取引高は73億ドルに達し、ベトナムと中東諸国との貿易で最も高い水準となりました。2025年1月から9月の9か月間では50億ドルを超えています。クウェートから輸入される原油の大部分はギーソン製油所の安定稼働を支えており、同製油所はベトナム国内で消費される石油製品の35%以上を供給しています。また、ベトナムの対クウェート輸出は、農産物・水産物、果物、木製家具、機械・機器、電子製品など、近年ますます多様化し、付加価値も高まっています。
タン大使によりますと、石油・ガス、そしてエネルギー全般における二国間協力には、新たな方向性に広がる可能性があるといいます。ベトナムは、東南アジアで有力な石油貯蔵・流通拠点となるために必要な条件を備えています。同時に、世界的に再生可能エネルギーへの転換が進む中、両国にはグリーンエネルギーやクリーンエネルギーの開発に向けた協力の余地が大きく、それぞれの目標や国際的な約束の達成に寄与することが期待されています。両国は、クウェートの資金力とベトナムの生産・技術力を生かし、太陽光発電、風力発電、グリーン水素などの分野で共同研究や共同投資を進めることが可能だとしています。
ベトナムは、躍動する経済と魅力的な投資環境を背景に、クウェートの投資ファンドからより大きな関心を得たい考えです。今後、両国は地域における新たな金融センターの形成につながる大型プロジェクトでの協力を進めることが期待されています。ベトナムは、クウェートが東南アジアへの投資を拡大する際のゲートウェーとなり得る一方、クウェートはベトナムが中東および周辺市場へアクセスするうえでの戦略的パートナーとなることが期待されています。
また、ベトナムは、世界有数の農産物・水産物輸出国としての地位に自信を持っており、クウェート市場に対して多様で安定的、かつ長期的にハラール対応の食品を提供することが可能です。この分野での協力は、クウェートの食料調達の多様化に寄与するとともに、ベトナムにとってもハラール農産品のバリューチェーンの構築や、GCCおよび中東全体への市場拡大につながるとしています。
タン大使はまた、ベトナムがクウェートを含む多くの国の観光客にとって人気の渡航先となりつつあり、クウェートでは旅行が生活の重要な要素と考えられていることを踏まえ、両国が直行便の開設や観光プロモーションの拡充で協力することを提案しました。
さらに大使は、両国は政治・経済の両面で、ASEANとGCCの協力を前進させる「橋渡し役」を果たすのに適した立場にあると指摘し、将来的な地域間連携の深化に向けて、有望な道が開けていると強調しました。
二国間協力の実効性を高めるため、タン大使は、公式訪問だけでなく、多国間の会議やイベントを通じたハイレベル交流を維持・促進するよう提案しました。
大使はまた、ベトナムはクウェートとの協力拡大において、より主体的かつ積極的な役割を示す必要があると指摘しました。同時に、GCC地域については、全体として一貫性のあるアプローチを取りつつ、国ごとの事情に応じた柔軟な対応が求められると述べました。さらに、既存の協力枠組みを十分に活用または格上げし、さまざまな分野で締結済みの二国間協定を効果的に履行することの重要性を強調しました。
さらに、両国間の政治的コミットメントに加え、あらゆるレベルでの緊密で協調的な協力こそが、ベトナムとクウェートが課題や相違を乗り越え、双方の潜在力と機会を生かし、二国間関係をより包括的で持続可能な新たな段階へ引き上げる鍵になると述べました。