貧困のないベトナムを目指して

世界で最も速く貧困を克服した国の一つとして、ベトナムは貧困削減へのたゆまぬ努力が国際社会から高く評価されています。党と国家の強い指導と、国民一人ひとりの決意に支えられ、「貧困のないベトナム」という目標は着実に現実のものとなりつつあります。

ディエンビエン省で稲を収穫する農家
ディエンビエン省で稲を収穫する農家

2025年中に貧困率は1%を下回る見通し

農業・環境省傘下の国家貧困削減局の報告によりますと、2021年から2025年にかけて、ベトナムの貧困削減の取り組みは国会および政府が設定した目標を上回り、年間平均1~1.5%の減少率を達成しています。

2024年には、貧困率は2021年の5.2%から1.93%に低下し、少数民族および山岳地域では年間3%以上の減少を実現しました。

2025年末までには、全国の多次元貧困率は約0.9~1.1%になると予測されており、少数民族の貧困率は12.55%となる見込みです。

国家貧困削減局のファム・ホン・ダオ副局長は、1998年には全国の貧困率が約58%であったのに対し、2024年末にはわずか1.93%にまで低下したことを強調しました。

ベトナムは、最低生活水準と持続可能な開発目標を結びつけた多次元的貧困アプローチを導入した、世界で最初の30か国の一つであり、アジアでは最も早い時期に導入した国の一つである。

国際社会は現在も、ベトナムを最も速く貧困から脱却した国の一つとして評価しています。こうした成果を達成するため、党と国家は多大な資源を優先的に配分してきました。2021~2025年の持続可能な貧困削減に向けた国家目標プログラムには、中央予算から48兆ドン、地方予算から12兆ドン、さらに民間資金を含め、総額75兆ドンが投入されました。

これまでに1万500件を超える貧困削減モデルやプロジェクトが実施され、貧困地域における持続可能な生計の確立や、経済・労働構造の転換が進められています。恵まれない地域のインフラ整備も大きく改善され、地域間格差の縮小に寄与しています。

これまでに、沿岸部、島しょ部、国境地域に位置する特に困難な状況にある19のコミューン(社)と、旧行政区分における3つの貧困地区が貧困から脱却しました。「貧しい人々のために ― 誰一人取り残さない」を掲げるキャンペーンも広く支持を集め、自立への意識を高めるとともに、社会全体からの資金や支援の広がりにつながっています。

ベトナムは、社会経済発展の各段階に応じて国家の貧困基準をこれまでに8回改定してきました。同国は、最低生活水準と持続可能な開発目標を結びつけた多次元的貧困アプローチを導入した世界で最初の30か国の一つであり、アジアでは最も早い時期に導入した国の一つです。

ファム・ホン・ダオ副局長は、政府は人々が貧困から抜け出すことを支援するだけでなく、再び貧困に陥るのを防ぐための政策にも力を入れていると述べました。そのために、融資支援、雇用創出、職業訓練、無償の医療保険、経済的に厳しい家庭の学生に対する授業料免除などの取り組みを進めています。また、貧困削減プログラムにはジェンダー平等の観点も組み込まれており、社会的に弱い立場にある地域で、女性や少女の役割を高めることにもつながっています。

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国際社会は今もなお、ベトナムを最も速く貧困から脱却した国の一つとして評価している。

貧困削減に向けた、持続可能・包摂的・柔軟的な今後の戦略

大きな進展があった一方で、ベトナムの貧困削減には依然として課題が残されています。

中部高原や北部山岳地帯では、貧困率が依然として高く、50~70%に達する地域もあります。再び貧困に陥るリスクも高く、一部の人々は依然として支援に大きく依存しています。多くの遠隔地では、基礎的なインフラ、医療、教育、安全な水、衛生設備が不足しています。

ファム・ホン・ダオ副局長は、農業・環境省が他省庁と連携し、2026~2030年の多次元的貧困基準の策定を進めていると明かしました。これは、包括的で持続可能な貧困基準の確立を求める党中央書記局指示第05号に沿ったものです。提案されている所得基準は、都市部で一人当たり月額280万ドン(約106ドル)、農村部で220万ドンです。

党と国家の力強い支援、国民のたくましい精神、そして的確に設計された政策によって、「貧困のないベトナム」という目標は近い将来、現実のものになると期待されている。

新たな指標として、清潔な水や衛生、デジタルサービス、廃棄物管理、自然災害への脆弱性なども評価対象となります。2026年から2030年にかけて、新農村建設と持続可能な貧困削減の国家目標プログラムには、総額約360兆ドンの国家予算が充てられる予定です。

貧困削減の取り組みは、農村開発、グリーン経済成長、デジタル変革、気候変動への適応、多様で持続可能な生計の推進と密接に連携し、各地域の生態的・文化的特性を十分に考慮して進められます。

安定した雇用の創出、困窮労働者のデジタルスキル向上、都市・農村双方での生計機会の拡大、起業やシェアリングエコノミーの促進にも重点が置かれます。

また、脆弱な立場にある人々を優先し、ジェンダー平等や子どもの保護、そしてすべての人が基礎的な社会サービスを利用できる環境の確保にも引き続き取り組みます。

国家は引き続き主導的な役割を果たしつつ、地域社会、企業、国際機関の参加を促し、管理の透明性と効率性を確保していきます。

遠隔地の住民は、特に子どもへの社会的影響を考慮し、出稼ぎを望まない傾向があるため、地元で安定した雇用機会を創出して収入を確保し、移住の必要性を減らすことが重要だとされています。

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トゥエンクアン省の住民が生計向上のための融資手続きを行う様子(写真:NDO/ホン・アイン)

ベトナムは、職業訓練、生産管理、製品流通におけるデジタル変革を加速させ、「すべての人のためのデジタルリテラシー」運動や「スマート新農村」モデルなどの取り組みを通じて、経済的に厳しい立場にある労働者のデジタル能力向上を図っていきます。

また、ジェンダー平等や脆弱な立場にある人々の保護、貧困削減施策の実施・監視における地域社会の能力強化にも重点が置かれます。

地域社会の役割を高めるため、分権化や基層職員の能力強化、デジタルデータ基盤の整備が進められます。ベトナム祖国戦線や社会団体も、貧困削減活動や関連キャンペーンの監督に重要な役割を担うことになります。

党と国家の力強い支援、国民のたくましい精神、そして的確に設計された政策によって、「貧困のないベトナム」という目標は近い将来、現実のものになると期待されています。

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