地域に最も深く根ざした経済部門として、多様な業種・分野を包含する自営業部門は、ベトナム国民の自立の精神と、豊かさへの正当な願いを鮮やかに体現しています。
自営業の成長に新たな機会を開く
自営業部門の役割と貢献が高まる中、党は定額課税方式から自己申告方式への移行を定めた第68号決議(NQ/TW)および第198/2025/QH15号決議を発出しました。この動きは、自営業部門が変革の時代において成長し、その地位を確立するための新たな機会を切り開くことを目的としています。
実際の売上に基づいて申告し、納税することは、事業活動の透明性を確保するうえで不可欠です。定額課税から申告納税方式への移行は、手続きを増やすことが目的ではなく、考え方と信頼のあり方を改めることだとされています。すなわち、納税者が実際の所得に応じて適切に申告・納税することを当局が信頼し、税務当局は電子データを活用した支援や確認、公平性の確保に重点を置くという考え方です。
実務上、定額課税方式は公平性や透明性の面で課題が明らかになっています。企業は管理ツールや専門の人員を有していますが、多くの個人事業者は帳簿管理が不十分で、経験に頼って営業しており、技術や行政手続きにも依然として慎重な姿勢を示しています。このため、電子インボイスや電子税務サービスなどの支援策を導入しても、期待した効果が十分に上がっていないのが現状です。
そのため税務当局は、個人事業者が企業と同様の政策にアクセスし、享受できるよう支援し、より高い透明性と公平性の実現を目指しています。個人事業者が収入や支出を適切に記帳するようになれば、自身の経営状況をより明確に把握でき、計画の見直しや競争力の向上にもつながります。インボイスを通じた取引や電子決済の活用は、信頼性や法的地位を強化するだけでなく、資金調達や新規顧客へのアクセスも拡大し、個人事業者が安心して正式な経済部門に参入することを可能にします。
実収入に基づく申告・納税は、持続可能な発展の基盤を築き、実力に基づく透明かつ公平なビジネス環境の創出につながります。正確な収入データは、国家が融資、保険、職業訓練、各種支援策に関する政策をより適切に立案することを可能にし、個人事業者が企業と同様の発展資源にアクセスできるようになります。
さらに、申告方式は健全な財務管理習慣を促進し、収入・支出の明確な記録、業績評価、リスクの最小化とともに、より的確な経営判断を可能にします。自営業は、段階的に非公式部門から公式部門へ移行し、保護や投資の後押しを受け、事業拡大の機会を得ることが期待されます。こうした透明性と主体的な取り組みが、実力、正確な情報、そして確かな機会に支えられた持続的な成長の基盤となります。
国民に負担をかけない技術改革
今後は推計に基づく課税ではなく、電子インボイス、電子売上帳簿、オンライン申告ツールの導入により、個人事業主の売上がデータとして記録されるようになります。
重要なのは、手続きのデジタル化が負担となるのではなく、これまで以上に簡単で便利に納税できるようになるという点です。市場の売り手やカフェ経営者、食料品店、オンライン販売者まで、誰もがモバイル端末を数回操作するだけで申告と納税ができるようになります。税務職員は行政サービスの精神に基づき、納税者を支援する役割を担い、国民に便利で、国家に効率的で、社会に公平な現代的な行政の実現に寄与します。
税制改革は税務当局だけの努力では成し遂げられず、各省庁、関係機関、地方当局との緊密な連携が欠かせません。特に電子インボイスに関するデータ連携を高めるため、財務省は公安省、銀行、事業登録機関、社会保険機関と協力し、統合されたビッグデータシステムの構築を進めています。とりわけ、個人の納税者番号と国民ID番号の連携を図ることで、重複や漏れの防止、脱税対策に効果的な管理が可能になります。
税務分野はまた、地方人民委員会、ベトナム商工会議所(VCCI)、業界団体、社会組織と連携し、広報、人材育成、啓発活動を展開し、家計経営の税務・インボイス規定遵守を促しています。地方行政機関にも、信用支援、事業用地、スタートアップ支援プログラムの創設を奨励し、家計経営が能力を備えた段階で企業へと移行できるよう後押ししています。
現在、各省の税務局は、電子インボイスやオンライン申告に関する広報キャンペーン、公開相談会、人材育成、行政センターでのサポート拠点の設置などを進めています。これらの取り組みの効果は、国民の満足度と税務当局への信頼を測る指標となります。
資金調達とパートナーシップ拡大への道
実際の売上に基づいて申告・納税することは、収入拡大のてこになり得ます。定額課税から申告納税方式への移行により、自営業者は収入向上につながる三つの直接的な仕組みを活用できるようになります。
第一に、市場での信用と信頼が高まります。自営業者が電子インボイスを使用し、売上を申告することで、取引は透明性と法的な有効性を備え、買い手は法人税の経費として計上できるようになります。電子インボイスは、個人事業主が正式なサプライチェーンに参加するための“パスポート”となります。税法上、申告方式を採用する自営業者の発行するインボイスは、企業が損金算入できる正式な書類と認められており、企業は契約締結や銀行振込、より大きな発注を安心して行えるようになります。その結果、個人事業主は一般消費者向けから、より高付加価値で安定した法人顧客へと販路を広げることが可能になります。
第二に、資金調達や協力関係の構築が進みます。売上や経費、利益の透明な記録は、銀行や金融機関が事業能力を評価する際の信頼できる信用データとなります。確定申告に示された数値は経営実績を裏付ける根拠となり、家計経営が融資を受けたり、設備を購入したり、新たな事業用地を借りたり、店舗を増やしたりする際に有利に働きます。銀行口座を通じた取引、電子インボイス、POS端末による決済は、明確な財務履歴を形成し、取引先や仕入れ先からの信用力を高めます。資金調達や協力の幅が広がることで、売上が増えるだけでなく、より大きな顧客層に対応できる体制を整えることが可能になります。
第三に、投資や生産性向上への実質的な意欲が生まれます。従来の定額課税制度では、平均的な売上基準を超えるインセンティブが乏しく、停滞や成長意欲の低さを招いていました。申告納税方式の下では、収入や経費、利益を正確に把握する健全な経営管理の習慣が促され、事業を発展させていく動機が高まります。
すべての売上はデジタル文書として記録・保存され、事業拡大や設備投資、従業員の雇用、より大きな組織への供給といった場面での安心感につながります。申告納税は義務にとどまらず、個人事業主がより専門的に運営し、資金や取引先、新たな市場へ容易にアクセスするための現代的な財務管理ツールとなります。こうした透明性、主体性、計画性が、長期的な成長や生産性向上、デジタル経済における競争力を支える持続的な原動力となります。
定額課税から申告納税への移行は、より効率的な経済の構築と民間部門の力強い成長を促すことを目指しています。この移行の過程で個人事業主に寄り添うため、税務当局は制度、要員、管理、広報の各面で包括的な措置を講じ、すべての事業者が新制度に適応しながら成長を続けられるよう支援しています。