観光地に彩りを添えるベトナム伝統衣装

アオザイや伝統衣装が現代生活の中で復活しつつあり、新たな文化観光の要素として徐々に定着し始めています。祭りやパレード、伝統工芸村や博物館を巡るツアーなど、さまざまな場面でこの流れが広がっており、観光商品の多様化を促進するとともに、文化的な誇りを呼び起こし、文化産業の持続可能な発展にも寄与しています。

ホイアン旧市街でベトナムの伝統衣装を身にまとった観光客たち
ホイアン旧市街でベトナムの伝統衣装を身にまとった観光客たち

近年、ハノイはアオザイを象徴的な観光商品として推進する先駆的な都市の一つとなっています。直近では、2025年11月に「ハノイ観光アオザイフェスティバル2025」が開催され、約1,400人が市内の主要道路をパレードする催しが大きな注目を集めました。

このフェスティバルには数万人の来場者が訪れ、ハノイ各地の観光スポットで写真撮影や体験を楽しみ、市の魅力を広く発信し、文化遺産を重視する姿勢が示されました。

特に注目を集めたのは、国家無形文化遺産に認定された千年の歴史を持つチャックサー仕立て村の創始者を称える行列の再現です。アオザイ姿の人々が優雅に歩くホアンキエム湖やドンキンギアトゥック広場周辺の活気ある文化空間は、国内外の観光客にとって印象的な光景となりました。アオザイとともに、伝統衣装復興の動きも力強く広がっています。

特に2022年から開催されている全国伝統衣装フェスティバル「バク・ホア・ボ・ハイン」は若者の間で大きな人気を博し、回を追うごとに数千人規模の参加者を集めています。このイベントは、歴史を通じて多様に発展したベトナム伝統衣装の保存と普及に貢献しています。

さらに、「ハノイの秋に触れる」バスツアーでは、参加者がアオザイを着て市内を散策し、遺産スポットで写真を撮り、建築や風習について学ぶことができます。参加者数の着実な増加は、伝統衣装と結びついた観光商品の独自性、魅力、文化的豊かさを示しています。

ホーチミン市では、「第11回アオザイフェスティバル2025」が大きな人気を集め、1か月間で360万人が来場し、そのうち約60万人が外国人観光客でした。

南部女性博物館の広報部長グエン・ティ・キム・オアン氏によりますと、アオザイは単なる文化的象徴にとどまらず、遺産スポットでの写真ツアーや、工芸村での見学や買い物体験と結びついた、象徴的な商業・観光商品へと発展する可能性を秘めています。

アオザイは単なる文化的象徴にとどまらず、遺産スポットでの写真ツアーや、工芸村での見学や買い物体験と結びついた、象徴的な商業・観光商品へと発展する可能性を秘めている。

グエン・ティ・キム・オアン 南部女性博物館 広報部長

近年、同市の観光業界では「着る文化」体験が多数導入されています。アオザイを着てフランス建築の名所で写真撮影をしたり、デザインや仕立てのワークショップに参加したり、音楽と組み合わせたアオザイファッションショーに出席したりといった体験が提供されています。ベトナム衣装研究院のシー・ホアン院長は、ベトナムには法的に「国民衣装」を定める制度はないものの、長年にわたりアオザイは慣習として着用され、世界の多くの人々がベトナムを象徴する衣装として認識していると述べました。

特筆すべきは、8月9日にハノイでベトナム・アオザイ文化協会が設立されたことです。これは、アオザイや伝統衣装を中心とした文化・観光エコシステムの構築に向けた重要な節目とされ、研究・振興・商業化を体系的かつ一体的に進める方向性を示しています。

実際、伝統衣装を取り入れた観光は、適切に企画されれば高い集客力を発揮します。日本、韓国、中国、タイなどでは、伝統衣装の貸出、遺産スポットでの撮影、文化体験などを組み合わせたモデルが成功しており、観光客が着物、韓服、漢服などを着てSNSで発信することで、観光地のブランド力向上や地域コミュニティの収入増加に大きく貢献しています。

ベトナムでも、特定期間にアオザイ着用者を対象に無料・割引入場を行うフエ遺跡群、伝統衣装体験を拡充したタンロン皇城跡など、伝統衣装を奨励する取り組みが広がっています。さらに、ニャチャンのアオザイ・シクロツアー、フエのアオザイ・サイクリングツアー、ホイアン旧市街での古代衣装ツアーなど、多様な体験型プログラムが登場しています。専門家の間では、アオザイを文化遺産・国民衣装として正式認定することが、将来的なUNESCO登録への道を開くとの意見もあります。

競争が激化する観光業界において、伝統衣装や料理、民俗芸能など地域文化の価値に基づく観光商品の開発は戦略的な意義を持ちます。アオザイや伝統衣装を着て街を歩いたり、シクロに乗ったり、遺産を巡ったりする体験には、伝統衣装ならではの独自の魅力があります。こうした体験を通じて、旅の一つ一つがベトナムの美しさを国際社会にシンプルでありながら深い感動とともに伝えるチャンネルとなっています。

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