子どもたちが遊び、ごちそうを楽しみ、提灯を持って道を練り歩くだけでなく、世代を超えて受け継がれてきたベトナムの伝統的な文化的価値観を体現するものでもあります。
にぎわいにあふれる中秋節
旧暦8月、ベトナムの隅々まで祭りのにぎやかな雰囲気で満ちあふれます。ハノイ旧市街からタンロン皇城、フエやホイアン、中部高原、南部、さらには海外在住のベトナム人コミュニティにいたるまで、色とりどりで華やかな中秋節は何百万人もの子どもたちに喜びをもたらし、地域社会をつなぐ意義深い絆となっています。
文化スポーツ観光省が主催するイベントは、10月2日から5日までベトナム文化芸術展示センターで開催され、子ども向けの多彩な体験型アクティビティやステージパフォーマンスが行われています。
展示エリアは、獅子頭、張り子の面、紙の官人、提灯、太鼓、白鳥の飾り物、果物の盛り合わせなど、中秋節を象徴する色鮮やかな玩具で彩られ、にぎやかな中秋節の雰囲気を演出しています。来場者に懐かしい子ども時代の思い出を呼び起こす展示エリアでは、写真撮影も楽しめます。レトロとモダンなベトナムの雰囲気を融合させたフォトブースは、若者たちに人気の撮影スポットとなっています。
 イベントの目玉は体験型ワークショップで、子どもたちは陶芸、フィギュアペインティング、版画、手芸、アロマワックス作り、紙の提灯作りなどを体験できます。これらのワークショップは、子どもたちが伝統工芸への理解を深めるとともに、中秋節の思い出を作る機会となっています。
ベトナム文化芸術展示センターのチャン・クアン・ヴィン副所長は、イベントの毎年の開催は、社会の次世代に対する高い関心というメッセージを伝えるものであり、同時に現代生活の中で国の文化的価値を保存・発揮する実践的な取り組みでもあるといいます。
ハノイのタンロン皇城では、2025年の中秋節イベントの一環で、「伝統的な中秋節」と「李朝(1009~1225年)の王宮中秋節」という2つのテーマで2つの空間を再現しています。回転式の灯籠、張り子の面、太鼓、「トー・ヘー」(米粉から作られた人形)などの展示や、千年以上前の遺物を復元した展示で、来場者は古代タンロンの中秋節の雰囲気を感じることができます。
中部のフエ市では、入場料無料の「王宮中秋節」イベントが10月6日~7日に王宮で開催され、バオラ提灯、獅子舞、提灯パレード、伝統的な王宮遊戯「バイ・ヴー」(こま回し)や「サム・フオン」(おみくじ)などを体験できます。
各地で中秋節の雰囲気が盛り上がりを見せる中、ラムドンからタイニンまでの困難な状況にある地域や山間部の大勢の子どもも、心温まる楽しい中秋節を迎えます。トゥエンクアン省では、約4,500人の恵まれない子どもたちに総額約20億ドン(75,800米ドル)相当の奨学金や贈り物が贈られました。タイニン省では、工場労働者の子ども250人がイベント「心温まる満月の夜祭り」に参加し、獅子舞を鑑賞し、中秋節のプレゼントを受け取りました。このように、中秋節は地域社会の連帯の架け橋となり、人々が愛と思いやりを分かち合う機会となっています。
ベトナム国内だけでなく、スペインのベトナム人コミュニティでも中秋節を祝うイベントが行われました。約200人の親子や多国籍の人々が提灯作りに参加し、伝統的な月餅を味わい、提灯パレードや祝祭の集いを楽しみました。
この祝祭に出席したグエン・ヴァン・フン文化スポーツ観光大臣は、スペインのベトナム人コミュニティとともに意義深いイベントに参加できたことへの喜びを語りました。
同大臣は、中秋節が旧正月、建国記念日などと並ぶベトナムの最も重要な祝祭の一つであり、家族の絆を深め、愛情や思いやりを育み、国の独自の伝統文化を大切にし、守り続けることを促すものであると強調しました。
心のつながりと文化の原点を感じる祭り
ベトナムの文化生活において、中秋節は「子どもの祭り」として親しまれています。歴史史料によりますと、李朝時代にはすでにタンロンの都で盛大な祝祭となっており、王は王宮と庶民側の両方で宴会、水上人形劇、ボートレース、獅子舞などを催しました。都全体が提灯や花で美しく飾られ、人々は喜びに満ちて祝祭に参加しました。祖先崇拝、果物の盛り合わせの用意、提灯の飾り付け、月餅や提灯パレードを楽しむといった伝統的な習慣は、世代を超えて受け継がれ、今日もベトナム文化遺産の大切な一部となっています。
 何千年もの時を経てもなお、毎年中秋節が来ると、子どもたちは提灯パレードや獅子舞、祭りのお菓子を心待ちにしています。大人にとっては、家族や大切な人と集う「団らん」の象徴であり、すべてのベトナム人にとって温かく懐かしい子ども時代や家族の絆と深く結びついた祭りです。
2025年の中秋節(今年は10月6日)にあたり、ルオン・クオン国家主席は全国の子どもたちに宛てた書簡で、この行事が世代を超えてベトナム文化生活に欠かせない存在であり、子どもたちが楽しく遊び、家族や友人と集う機会であることを強調しました。
「党、国家、社会は常に子どもたちに特別な関心を寄せ、学びや安全に配慮した遊び、健やかな成長のために最善の環境を整えている」と述べ、子どもたちが学びへの情熱を持ち、勤勉で優しく、団結し、互いに支え合いながら成長し、より豊かで文明的なベトナムを築き上げることに貢献してほしいとの期待を示しました。
主席は、子どもたちが家族や先生、友人とともに楽しく、意義深く、安全で温かい中秋節を過ごすことを願い、台風や洪水など困難な状況にある地域の子どもたちにも、逆境に負けず、純真で輝く笑顔を絶やさず、美しい夢を育み続けてほしいと激励しました。
また、党と国家の配慮に加え、国民全体の連帯や思いやり、保護があれば、子どもたちとその家族は困難を乗り越えて生活を安定させ、学びや夢の実現に向けて歩み続けることができると信じていると述べました。