以下はルオン・クオン国家主席による歓迎の挨拶の全文です。
国連サイバー犯罪防止条約署名式における歓迎の辞
アントニオ・グテーレス国連事務総長閣下、各国首脳、加盟国および国際機関代表団の皆様、
ご列席の皆様、
ベトナム国家と国民を代表し、「平和の都市」ハノイへお越しになった皆様を心より歓迎いたします。本日は、国連サイバー犯罪防止条約の署名式という、サイバー空間における新たな国際協力の時代の幕開けを告げる歴史的な行事にご臨席いただき、誠に光栄です。
「サイバー犯罪への対抗 ― 責任の共有 ― 未来の安全保障」をテーマとする本日の式典は、安全で健全かつ持続可能なサイバー空間を築くために、国際社会が連帯と共同行動の精神を体現するものです。
この出来事は、新たな国際的法的枠組みの誕生を告げるとともに、平和・安全・安定・発展という共通の責務を担うため、国々が相違を乗り越えて肩を並べる多国間主義の不変の力を改めて示すものです。
ご列席の皆様、
人類の歴史において、科学技術は常に人間の生存・交流・発展の可能性を広げてきました。今日、私たちはサイバー空間という新たな領域に身を置いています。そこでは、あらゆるデータの流れ、あらゆるデジタル行為、あらゆる技術的な相互作用が、国家の安全、経済の安定、そして国の未来に深く影響を及ぼします。
サイバー空間は、発展の新たな場であると同時に、安全保障の新たな最前線でもあります。そこでは機会とリスクが交錯し、技術の進歩には常に倫理と責任が伴わなければなりません。
デジタル時代の目覚ましい成果の一方で、サイバー犯罪は規模・複雑さ・影響力を急速に拡大させています。それは各国の安全と発展、市民一人ひとりの幸福と安心に直結する喫緊の課題です。サイバー攻撃・データ窃取・情報操作・重要インフラへの侵入などは、ますます巧妙化・組織化し、世界経済に年間数兆ドル規模の損失をもたらしています。市民の個人情報と安全が脅かされ、特に女性や子どもが最も脆弱な立場に置かれています。
国家の主権・利益・安全を守り、サイバー空間を保護することは、時代の要請であると同時に、平和・安定・共通の繁栄を支える持続可能な発展の前提条件です。
ご列席の皆様、
こうした地球規模の課題に直面するなか、ハノイ条約は団結と法の支配の象徴として誕生しました。5年に及ぶ交渉を経て、数十回の会合と数千件の意見を踏まえて結実した本条約は、各国の粘り強い努力と英知、そして信頼の結晶であり、対立よりも対話を、分断よりも協力を選んだ成果です。
このプロセスは、合意形成の精神、多国間主義の生命力、そして国連の中心的役割を体現しています。ハノイ条約は、世界に向けて三つの明確かつ持続的なメッセージを発信しています。
第一に、国際法を基盤に、安全で安心できるサイバー空間秩序を築くという私たち共通の決意を再確認すること。
第二に、分かち合い・連帯・相互支援の精神を重んじ、協力と能力構築を通じて安定的で強靭なサイバー空間を守ること。
第三に、すべての努力の最終目的は、人々の幸福であるということ。すなわち、技術は人類に奉仕し、発展は万人に機会をもたらし、誰一人取り残さないデジタル変革を実現することです。
これら三つのメッセージは、法の支配・協力・人間中心というハノイ条約の核心的精神を鮮やかに示しています。それはまた、ベトナムが一貫して掲げてきた国際統合の理念 「法を基盤とし、協力を原動力とし、人を中心・主体・究極の目的とする 」に通じています。
ご来賓の皆様、
本日の署名式は、ベトナムにとって大いなる名誉であると同時に、国際社会に対する責務でもあります。独立・自立・平和・協力・発展、そして外交関係の多様化・多角化を旨とするベトナムの外交方針の下、わが国はこの5年間、各国と緊密に協力しながら本条約の交渉に積極的に参加してきました。
戦火の廃墟から立ち上がった首都ハノイが、平和と協力と信頼に基づくサイバー空間の出発点として選ばれたことを、私たちは誇りに思います。この署名式を主催し、ハノイ条約の最初の署名国の一つとなることは、ベトナムが法の支配、国際的義務の遵守、そしてサイバー空間における国際法秩序の強化に強く取り組んでいる証です。
この条約を実効的なものとするためには、政治的意思だけでなく、実施のための資源も必要です。人材育成・技術支援・技術移転に関する国際協力を通じて、各国の能力を高め、安全で安定したサイバー空間を実現することが不可欠です。
すべての加盟国が速やかに本条約を批准し、この重要な枠組みが一日も早く発効することを強く呼びかけます。それによって、公正で包摂的、そして法に基づくデジタル秩序の確立に向けた確固たる基盤が築かれるでしょう。
サイバー犯罪防止条約署名式の成功を心より祈念いたします。皆様のご健康、ご多幸、そしてさらなるご発展をお祈り申し上げます。
ご清聴ありがとうございました。