ベトナム 農産物のEU輸出拡大へ

財務省傘下の税関総局の統計によりますと、2025年上半期におけるベトナム産果物・野菜のEU(欧州連合)向け輸出額は2億3,320万ドルに達し、前年同期比で44.1%増加しました。

アメリカやEU向けの輸出用に加工されるベトナム産パッションフルーツが増えている。
アメリカやEU向けの輸出用に加工されるベトナム産パッションフルーツが増えている。

果実・野菜の多くの品目で力強い伸びがみられ、2024年同期比で2桁、品目によっては3桁の増加となりました。2025年上半期のEU向け輸出ではパッションフルーツが最大の品目で、輸出額は5,859万ドルと112.9%増え、同地域向け果実・野菜輸出全体の25.1%を占めました。

そのほか、マンゴーが3,990万ドル(28.6%増)、ピスタチオが3,420万ドル(102.1%増)、パイナップルが1,950万ドル(207.9%増)、ココナッツが1,830万ドル(49.1%増)、ドラゴンフルーツが936万ドル(10.5%増)と、いずれも大きく伸びました。

現在、ベトナムはEUにおける野菜、花、根菜、果物および加工品の第24位の供給国であり、輸出額は約1億6,950万ドル、前年同期比で37.8%増となっています。

税関総局の統計によると、2025年上半期におけるベトナム産果物・野菜のEU向け輸出額は2億3,320万ドルに達し、前年同期比で44.1%増加した。

ベトナム果実・野菜協会のグエン・タイン・ビン会長は、EUでの輸出拡大について、品質向上を背景にしたベトナム産品への消費者の評価の高まりが要因だと説明しました。同時に、EU域内では消費需要が力強く回復する一方、加盟国の一部では天候不順により果実の生産量が減少しているといいます。

果物・野菜に加え、水産物もEU市場で大きな潜在力を持っており、特にエビとパンガシウスが注目されています。

2025年上半期のベトナム産エビのEU向け輸出額は2億5,200万ドルを超え、前年同期比16%増、国全体のエビ輸出額の12%を占めました。主要市場の多くで顕著な伸びがみられ、ドイツは24%増、ベルギーは31%増、フランスは約20%増となりました。

パンガシウスについては、2025年7月末時点のEU向け輸出額が1億400万ドルとなり、前年同期比5%増となりました。スペイン、ベルギー、フランスが堅調に伸び、ドイツとオランダの減少を補いました。コメ、木製家具、天然ゴムやゴム製品なども、市場需要の強さを背景にEU向け輸出が伸びています。

駐EU・ベトナム農務参事官のチャン・ヴァン・コン氏によりますと、EU加盟国は年間約1兆1,000億ユーロを食品・飲料に支出しており、家計支出の21.4%を占めています。また、農林水産物の世界有数の消費地域で、年間支出は約3,400億ドルに上ります。しかし、ベトナムの市場シェアは依然として低く、約2%にとどまっています。

EUは年間550億〜600億ドル相当の水産物を輸入しており、一人当たり年間消費量は24.5キロと、世界最大の水産物消費地域となっています。

しかし2024年におけるEUのベトナムからの輸入額はわずか10億4,000万ドルにとどまっています。コメでは、EUは年間170万〜200万トンを輸入していますが、ベトナム産は約9万7,600トンに過ぎません。年間590億ドル規模の木材・木製品分野でも、2024年にEUがベトナムから輸入した額は約5億ドルにとどまりました。

コン農務参事官は、EU向け農産物輸出を強化するには、国家ブランドの向上や製品の商標構築を進めるとともに、EUの小売・流通チャネルでの市場浸透を深め、品目の多様化を図ることで、ベトナム産農産物の認知度を一層高めることが不可欠だと強調しました。

一方、ベトナム水産輸出加工協会(VASEP)によりますと、EUは農産物、食品、水産物に関連する規制を毎年約180件、新規制定または改正しています。VASEPのエビ市場専門家のフォン・ティ・キム・トゥ氏は、EUの広範かつ絶えず変化する法規制に対応するため、企業はEUが支援する情報提供プログラム「AGRINFO」を活用することで、同域内の重要な政策動向を随時把握できると指摘しました。

企業は「agrinfo.eu」から「AGRINFO」にアクセスでき、同サイトでは、定期配信のニュース、複雑な新規制の解説、各種公開資料、RASFFやTRACESといった警報システムのデータをまとめた閲覧ツールなどが提供されています。EU市場でビジネスを広げるには、こうした情報を日頃から積極的に把握することが、企業の重要な責務であると同時に競争力の源にもなります。

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