首相 政策演説でベトナムの発展構想とクウェートとの戦略的関係を示す

ベトナムのファム・ミン・チン首相は、クウェート公式訪問の一環として11月18日、クウェート外交学院で政策演説を行い、ベトナムとクウェートの関係が変革期に入りつつあり、東南アジアと湾岸諸国の間で模範的なパートナーシップとなる可能性を秘めていると強調しました。また、両国関係はアジアと中東を結ぶ堅固な友好の架け橋となるとも述べました。

ベトナムのファム・ミン・チン首相は、11月18日にクウェート外交学院で政策演説を行った。(写真:VNA)
ベトナムのファム・ミン・チン首相は、11月18日にクウェート外交学院で政策演説を行った。(写真:VNA)

首相は、クウェートの首長、皇太子、政府、そして国民に対し、ベトナム代表団への温かく心のこもった歓迎に深い感謝の意を表しました。今回の訪問は、16年ぶりとなるベトナム高官による公式訪問であり、両国が2026年に迎える外交樹立50周年を控える重要な節目に行われたと述べました。

首相は世界情勢に対するベトナムの見解を示し、21世紀初頭が前例のない課題や不確実性、そして機会とリスクが絡み合う時代であると指摘しました。

国際関係における6つの主要な矛盾を指摘しつつ、政治的分断、経済の分断化、制度の格差、発展の不均衡といった障壁がある中でも、平和・協力・発展がすべての国の共通の願いであることを強調しました。

こうした中でチン首相は、中東がヨーロッパ、アジア、アフリカを結ぶ要衝であり、三つの世界宗教の発祥地を抱え、世界のエネルギーと貿易の中枢となる地域として戦略的重要性を持つと述べました。

各国にはそれぞれ独自の発展の道があるとしながらも、ベトナムとクウェートは「誠実で平等、相互尊重に基づく協力」を共通のビジョンとして掲げていると述べました。その指針は、相互信頼と相互理解、国連憲章および国際法の原則に基づき、最終的には平和で安定し、持続可能に発展する世界の構築を目指すものです。

また、両国が平和、公正、慈愛、人間中心の発展に対する共通の価値観を持っていることを改めて確認しました。

首相は、独立闘争から国家刷新に至るまでの過去80年にわたるベトナムの歩みを紹介しました。ベトナムは、国の建設と発展において、国際社会への参画を深めた社会主義志向の市場経済、社会主義的民主主義、そして社会主義的法治国家という三つの基本基盤を一貫して推進していると説明しました。

同時にベトナムは、政治・社会の安定維持、人々を発展の中心・主体・目標・原動力・最も重要な資源とすること、そして経済成長が社会進歩や公正、福祉、環境を犠牲にしないことという三つの発展の基本方針を掲げていると述べました。

クウェート外交学院でのファム・ミン・チン首相の政策演説に出席する代表団(写真:VNA)
クウェート外交学院でのファム・ミン・チン首相の政策演説に出席する代表団(写真:VNA)

チン首相は六つの優先政策分野を示しました。経済発展は中心的課題であり、独立性と強靭性を備えつつ、包括的かつ実効的な国際社会への参画を積極的に進める経済を目指すと述べました。文化の発展は社会の精神的基盤であると位置づけました。

外交では、独立・自立、多様化、多角化という一貫した方針を掲げ、国際社会の良き友人、信頼できるパートナー、責任あるメンバーであり続けると強調しました。また、社会保障の確保に注力し、国民の物質的・精神的生活と幸福の向上に努めると述べました。

国防・安全保障の確保は重要かつ恒常的な任務であるとし、ベトナムの「四つのノー」国防政策、つまり軍事同盟に参加しない、他国と連携して他国に対抗しない、外国軍の自国領土への軍事基地設置や軍事利用を認めない、国際関係で武力を用いたり武力を行使すると威嚇しない、を改めて確認しました。

また、党の指導方針の強化と、清廉で強固な政治体制の構築、断固たる腐敗防止の取り組みの重要性を強調しました。

ドイモイ(刷新)から約40年、ベトナムは戦争と経済制裁に苦しんだ国から、世界でますます重要性を増すパートナーへと変貌を遂げました。現在、194か国と外交関係を樹立し、14か国(国連安全保障理事会常任理事国5か国を含む)と包括的戦略的パートナーシップを締結、17の自由貿易協定を通じて60以上のパートナーと貿易協定を結んでいます。

ベトナムのGDPは2025年に約5,100億ドルに達し、世界32位となる見込みで、一人当たり所得も1990年の100ドル強から5,000ドルを超える見通しです。現在、国際貿易と投資誘致の面で世界上位20か国に入っています。

チン首相は、ベトナムとクウェートの長年にわたる友好関係を振り返りました。クウェートは1976年にベトナムと国交を樹立した最初の湾岸諸国であり、約50年にわたり多国間フォーラムで互いに支え合い、平和・独立・発展という共通の願いを共有してきました。

また、クウェートは1979年のダウティエン灌漑プロジェクトを含む最大規模の優遇型のODAをベトナムに提供した最初の湾岸諸国であり、困難な時期には60万回分の新型コロナワクチンなど貴重な支援も行いました。現在もクウェートはベトナムにとって中東地域の主要なパートナーの一つであり、2024年の二国間貿易額は73億ドルに達し、象徴的なギーソン製油・石油化学コンビナートなど大規模投資を行っています。

しかし首相は、経済協力は依然として潜在力に見合っておらず、政治・外交関係も発展の速度に十分追いついていないと指摘しました。双方が課題を乗り越え、より強固な新たな協力段階へ進む必要があると呼びかけました。

チン首相は、クウェートの首長、皇太子、首相との会談内容を紹介し、両国が二国間関係を戦略的パートナーシップへ格上げすることで合意し、今後の協力の優先分野として、政治的信頼とハイレベル交流の強化、正当な利益の保護と国防・安全保障・非伝統的安全保障(サイバー犯罪防止条約に基づくサイバーセキュリティを含む)分野での協力強化、科学技術・イノベーション・デジタルトランスフォーメーション分野での連携拡大、石油・ガス・サービス・質の高い人材を含むエネルギー協力の深化など、9つの優先分野を特定したと述べました。

また、両国は地域・国際的な共通関心事項についても意見を交換しました。

チン首相は、ベトナムとクウェートの関係は歴史的な転換点にあり、東南アジアと湾岸諸国の協力モデルとなり、東南アジアと中東を結ぶ強固な架け橋となる可能性を持っていると強調しました。新たな戦略的パートナーシップは、双方が地域および国際社会の平和、安定、発展により積極的に貢献するための好条件を生み出すと述べました。

さらに同首相は、クウェート外交学院が次世代の外交官育成に果たす役割を強調し、両国の外交アカデミー間で新たに締結された覚書が、2026年から具体的な協力プログラムとして具現化されるとの期待を示しました。

クウェート外交学院での演説後、チン首相と夫人、そしてベトナム高官代表団は、シフィ・グリエブ・アルジェリア首相の招待を受けてアルジェリアへ向かいました。

VNA
Back to top