FTAを活用した輸出市場拡大を目指して

自由貿易協定(FTA)は、企業に多くの機会をもたらす一方で、さまざまな課題も提起しています。こういった状況に対応するため、ホーチミン市は企業がFTAによる機会を活かして輸出市場を拡大できるよう、さまざまな施策や政策を実施しています。

ホーチミン市の企業が、ホーチミン市貿易投資促進センター(ITPC)のショールームで自社製品を展示
ホーチミン市の企業が、ホーチミン市貿易投資促進センター(ITPC)のショールームで自社製品を展示

近年ベトナムは、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)、EU・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)、英国・ベトナム自由貿易協定(UKVFTA)、地域的な包括的経済連携(RCEP)など、主要な二国間および多国間の自由貿易協定(FTA)を締結し、実施してきました。

これらの協定により、企業は輸出市場の拡大、関税優遇の活用、投資誘致の促進に加え、ベトナム製品、特にホーチミン市産品の国際的な地位向上といった大きな恩恵を受けています。

これらの協定により、企業は輸出市場の拡大、関税優遇の活用、投資誘致の促進に加え、ベトナム製品、特にホーチミン市産品の国際的な地位向上といった大きな恩恵を受けている。

しかし専門家は、こうした機会には、原産地規則や製品品質基準、社会的責任、持続可能な発展に関する要件の厳格化、さらには国内市場における外国企業との激しい競争といった大きな課題も伴うと指摘しています。ホーチミン市の企業には、戦略の刷新やガバナンス能力の向上とともに、積極的な国際化によってFTAの利点を最大限に活用することが求められています。

ホーチミン市貿易投資促進センター(ITPC)のホー・ティ・クエン副所長は、同市が国の経済・貿易・国際化の中心地であることから、FTAを効果的に活用できるよう企業を支援することを最重要課題の一つに位置付けていると述べました。

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投資家たちはホーチミン市でビジネスチャンスを探る。

ITPCは、ワークショップ・研修・商談会・市場情報の提供などを通じて、企業の国際化・競争力強化・持続的成長を後押しする支援を今後も継続していくとしています。

ベトナム貿易促進局南部事務所(工業貿易省)のブイ・ホアン・イェン代表は、ベトナムの国際化がますます進展し、CPTPPやEUなどの主要市場へのアクセスを可能にする複数のFTAへの参加が実現していると述べました。

現在、ベトナムは18のFTAを締結しています。このうち17が発効済みで、60以上の国・地域、そして世界GDPの約90%にアクセスできるようになっています。

2024年には、ベトナムの国際的に開かれた経済のもと、貿易総額は7862億9000万米ドルに達し、輸出は前年比14.3%増の2桁成長を記録、貿易黒字は248億米ドルとなりました。

この成長を牽引しているのは、主に海外直接投資(FDI)部門であり、特にコンピューター・電子製品・機械・携帯電話などのハイテク産業で、国全体の輸出の71.8%を占めています。

工業貿易省によりますと、2023年から2024年にかけて、FTAの関税優遇を受けた商品の輸出収入は年平均12.7%の成長を遂げています。戦略的FTAの締結により、ベトナムは世界の製造業サプライチェーンの魅力的な拠点となっています。

FTAの広範なカバー範囲にもかかわらず、ベトナム企業による関税優遇の利用率は平均30~40%と依然として低い水準にとどまっている。

ブイ・ホアン・イェン(ベトナム貿易促進局南部事務所代表)

ブイ・ホアン・イェン氏は、FTAの広範なカバー範囲にもかかわらず、ベトナム企業による関税優遇の利用率は平均30~40%と依然として低い水準にとどまっていると指摘しました。

主な障壁として、アメリカや中国など主要市場への依存度の高さ、現地調達率の低さによる原材料の輸入依存、サプライチェーンの混乱リスク、環境・労働・知的財産・貿易基準に関する国際的なコンプライアンス圧力の高まりなどが挙げられています。

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ホーチミン市のITPCショールームで展示商品を見学する来場者

こうした課題を克服するため専門家は、ホーチミン市をはじめベトナム全国の企業に対し、国際基準に適合するための環境・労働基準の向上への積極的な投資を推奨しています。原産地規則への対応や競争力強化のためには、関連産業の育成や国内サプライチェーンの連携強化も不可欠だとしています。

こうした課題を克服するため専門家は、ホーチミン市をはじめベトナム全体の企業に対し、国際基準に適合するための環境・労働基準の向上への積極的な投資を推奨している。原産地規則への対応や競争力強化のためには、関連産業の育成や国内サプライチェーンの連携強化も不可欠。

中小企業(SME)とFDI部門の連携強化も、グローバルサプライチェーン内での相乗効果を生み出すために奨励されています。一方、国家による金融・信用支援政策は、特に中小企業がFTA要件を効果的に満たすために不可欠です。

これらの施策を総合的に実施することで、国内企業の変革を促し、国際化の過程で優位性を確保し、課題を成長の機会へと転換する原動力となります。

Grant Thorntonベトナムのディン・ティ・フオン・ザン・コンサルティングディレクターによりますと、FTAはホーチミン市を含むベトナム企業に大きな機会をもたらす一方、持続可能な発展に向けて、より高い基準が求められています。

新たなサプライヤーを求める国際的な企業は、法的・財務的な透明性、国際規則の遵守、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組み、リスク管理能力、そして継続的なイノベーションなどの要素にますます注目しています。

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