タイ湖ハス茶 伝統を守りブランド力向上へ

タイ湖(西湖)のハス茶は、「天古第一茶」(時代を超えた最高の茶)とも呼ばれ、タイ湖に咲く花びらが幾重にも重なるハスの花を用い、丹念で繊細な工程を経て作られる極上の香り高い茶として知られています。このタイ湖ハス茶の製法は、代々タイホー地区のクアンバ村の職人たちによって受け継がれ、守り育てられてきました。

ヒエン・シエムハス茶工房のオーナー、ルー・ティ・ヒエンさん
ヒエン・シエムハス茶工房のオーナー、ルー・ティ・ヒエンさん

タイ湖のハス茶は、四つ星のOCOP(一村一品)製品として認定されており、タイ湖およびハノイを代表する特産品の一つとなっています。

ブランドの確立へ

タイ湖地区人民委員会のグエン・ヴィエット・クオン副主席によりますと、同地区(旧タイ湖区)には、三つ星および四つ星のOCOP製品が数多くあります。なかでも特に注目されるのが、ハス茶、月餅、「バー・ゴアイ(Ba Ngoai) 」タニシ麺の三つです。これらの製品はいずれも、伝統の味を守りながら地域経済の発展に寄与し、内外の市場や観光客に地区の魅力を発信するという、住民の創意工夫と情熱を体現しています。その中でも、タイ湖のハス茶はとりわけ特別な存在となっています。

ハス茶づくりの伝統的な製法といえば、かつてのクアンアン地区(現タイ湖地区)を抜きに語ることはできません。時を経て、ハス茶は地元住民の誇りとなってきました。しかし、市場競争の激化や手作業中心の生産工程の負担などから、現在ではハス茶づくりを続ける世帯は大きく減少しています。

「ヒエン・シエムハス茶」のオーナー、ルー・ティ・ヒエンさんは、伝統を守る苦労について次のように語ります。「この仕事は非常に大変です。夜遅くまで起きて、朝早くから作業し、手作業で一つ一つ丁寧に茶葉を乾燥させなければなりません。暑い日には、炭火の窯の熱に耐えられる人はほとんどいません。そのため、多くの家庭がこの仕事をやめてしまいました。深い情熱がなければ続けられない職業です。大変だと分かっていますが、家族の伝統を守りたいと思っています。今は子どもたちにハス茶作りの秘訣を伝え、次世代に継承しています」。

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お茶の香り付けに使うおしべを取り出すため、ハスの花びらを丁寧に取り外す作業

困難な状況の中にあっても、地元の人々はこの伝統の職に深い愛着を持ち、ハス茶づくりの技を守り伝えることで、ベトナムを代表するブランドとして知られるようになりました。

伝統的なハス茶の製法を守ること自体が容易ではなく、現代の社会経済状況の中でそれを維持し、さらに発展させていくことは一層難しくなっています。

ヒエンさんによりますと、彼女の家に伝わるハス茶づくりの伝統は1911年にさかのぼるといいます。家族の誰もが役割を持ち、若者からお年寄りまで、花びらを取り分けたり、おしべを乾燥させたり、ハスの "米”と呼ばれる香りの粒を丁寧に集めたりしています。

ハスの"米"を取り出す作業は非常に繊細で、香りの粒を壊したり香りが失われないよう、丁寧で熟練した手さばきが求められます。お茶は伝統的な炭火乾燥の方法で仕上げられ、独特の香りが生み出されます。1キログラムのハス茶を作るには、香りが豊かで香りの粒を多く含むタイ湖産の「バク・ジエップ」種をおよそ1,000~1,200輪使用します。使用する茶葉も上質で純粋なものでなければなりません。1回のハス茶づくりには、香りづけ7回と乾燥7回を含む、21日間にも及ぶ緻密な工程を経て、ようやく理想的な香りと味わいが完成します。

1キログラムのハス茶を作るには多くの工程と手間がかかりますが、その分、完成した製品は市場で高く評価され、需要が常に供給を上回り、高値で取引されています。しかし、生産拡大について尋ねるとヒエンさんは、近年の急速な都市化により、タイ湖周辺の水質がハスの栽培に適さなくなり、タイ湖産ハス茶の独自性を支える原料が確保できなくなっていると説明しました。

安定した原料供給を確保するため、ヒエンさんの家族はバック・トゥ・リェム地区に池を借り、タイ湖産と同じ種を使ってハスを育てています。しかし、別の場所で育ったハスは品質が劣り、以前は1キログラムの茶にタイ湖産のハス1,000~1,200輪で十分だったところ、現在は他地域産のハスを2,000輪も使用しなければなりません。そのため生産量を増やすことは難しく、借りている池も品質・持続性の両面で限界があるのが現状です。

タイ湖ハス茶を広く知られる存在に

これまでタイ湖地区とハノイ市の当局の支援を受け、タイ湖ハス茶は各地の主要なイベントや商談会で紹介されてきました。さらに、市および地区の支援により、ハス茶は展示会への出展や、市のOCOPプログラムへの登録などの機会も得ています。

グエン・ヴィエット・クオン副主席によりますと、地域のハスの生産量は安定的に維持されており、OCOP製品の製造需要を十分に満たすとともに、国内外の市場にも供給されているということです。これは、地域におけるハス茶生産の持続可能性を示すだけでなく、その高い評価と品質を改めて裏付けるものです。地域のハス関連製品は、地元内外の消費者から信頼と支持を得ており、中央および市レベルの機関にも、外国からの来賓の歓迎行事などの公式行事用として提供されています。これらの製品は市場でも広く流通しており、地域のブランド力と品質の高さを示すとともに、地域のイメージ向上にも寄与しています。

タイ湖ハス茶のブランドを守りさらに発展させるため、クオン副主席は、加工や消費の需要拡大に対応できるよう、地域のハス生産量を引き続き維持・拡大していくと述べました。地区で栽培されるハスは品質と評判の両面で高い基準を満たしており、新鮮で香り高く、上質な原料を安定的に提供しています。これにより、ハス関連製品は国内外の市場で信頼される商品となり、タイ湖地区を代表するOCOP特産品としての地位を改めて確立しています。品質と生産工程の重視により、これらのハス製品は中央および市の機関への安定供給源となる一方、市場での販路も拡大し、雇用の創出や地域住民の所得向上にもつながっています。

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ハスの収穫作業

ハスの原料はすべてがタイ湖地区内で収穫されるわけではありませんが、協同組合の養殖池や湖で栽培されるハスは、厳格な基準に基づいて管理されており、新鮮で安定した品質が保たれています。ハスの生産量も安定しており、加工や消費の需要を十分に満たしています。収穫から加工までの各工程では品質管理が徹底され、選別や保存も適切に行われているため、安全で信頼性が高く、地域ならではの文化的価値を備えた製品が生み出されています。こうした取り組みにより、ハス関連製品は消費者からの信頼を得ており、OCOPブランドの強化とともに、地域のイメージを国内外に発信する一助となっています。

生産需要の拡大と市場の拡充に対応するため、タイ湖地区では、基準を満たした池や湖を拡張し、農家と連携して高品質で安定したハス原料を供給できる新たな栽培エリアの整備を進める計画です。収穫から加工までの各工程を一貫して厳格に管理し、出来上がった製品が香り高く、安全で高品質というOCOP基準を満たすよう徹底することで、地域のハス茶ブランドの信頼と評価をさらに高めることを目指しています。

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職人が伝統的なハス茶の香り付け技術を次世代に伝える様子

タイ湖ハス茶を五つ星OCOP製品へと格上げさせるにあたり、タイ湖地区人民委員会のクオン副主席は、地域が依然としていくつかの課題に直面していると指摘しました。具体的には、基準を満たしたハスの栽培面積が限られていること、原料ハスの品質にばらつきがあること、そして食品安全や製品品質に対する要求が一層厳しくなっていることなどです。さらに、加工や保存の工程においても、風味や鮮度、生産の均一性を確保するために改善が求められています。

短期的には、地域として技術指導の実施や農家との連携強化、さらに加工施設や品質管理体制への投資を進めることで、香り高く安全で、OCOPブランドにふさわしい評価基準を満たす製品づくりを目指し、ハス茶ブランドの価値向上を図っています。

長期的には、基準を満たしたハス栽培エリアの拡大、地域農家との連携強化、加工および保存技術の改善、品質管理の徹底など、包括的な取り組みを進める計画です。こうした施策を通じて、香り高く、安全で信頼性のある製品を安定的に生産し、地域特産品としてのハス茶ブランドの価値をさらに高め、五つ星OCOP製品の実現を目指しています。

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