このフォーラムには、両国の約50の地方行政機関の指導者や代表者のほか、各省庁、機関、企業、専門家らが参加しました。日本の高市早苗首相は、フォーラムに祝辞を寄せました。
外交関係樹立から50年が経ち、特に2023年に両国関係が包括的戦略的パートナーシップへ格上げされて以降、ベトナムと日本の関係は順調に発展しています。これまでに双方の地方間で110件を超える協力協定が締結されており、関係深化の重要な基盤となっています。
今回のフォーラムは、両国の首脳が合意した重点分野を具体化し、定期的な対話や連携の仕組みを構築することで、交流の深化、経験共有、そして双方にとって均衡の取れた実質的な協力を進めることを目的としています。
チン首相は挨拶の中で、トー・ラム書記長からのメッセージを伝えるとともに、全ての出席者に温かい歓迎の意を表しました。同首相は、フォーラムが「団結は力、協力は互恵、対話は信頼を築く」という共通の精神を体現していると強調しました。
首相は、地方間および企業間の協力がベトナムと日本の関係の特徴となっており、ハイレベルでの合意を具体的な協定や事業に落とし込む実効的なチャンネルになっていると述べました。日本は依然としてベトナムにとって最も重要な経済パートナーの一つであり、政府開発援助(ODA)の最大供与国であるほか、労働協力の主要な相手国で、第3位の投資国、第4位の貿易・観光パートナーとなっています。
包括的戦略的パートナーシップへの格上げ以降、協力分野はデジタルトランスフォーメーション、グリーントランスフォーメーション、循環型経済、クリエイティブ経済など新たな領域に拡大しています。イノベーションや科学技術は新たな柱となり、共同発展の幅広い可能性を切り開いています。
チン首相は、ベトナムの社会経済の成果について説明し、建国から約80年、ドイモイ(刷新)から40年を経て、ベトナムは戦争で荒廃し孤立した国から、世界35位の経済規模を持ち、貿易規模でも上位20位に入る国と変貌を遂げたと述べました。60のパートナーと17の自由貿易協定(FTA)を締結し、194か国と外交関係を維持しています。一人当たりのGDPは50倍に増加し、マクロ経済の安定、社会秩序、国防・安全保障が維持され、国民の生活水準も向上しています。
新たな発展段階に踏み出すにあたり、ベトナムは制度・人材・インフラのボトルネック解消に取り組み、あらゆる資源を動員し、科学技術・デジタルトランスフォーメーション・イノベーションを主要な成長の原動力として経済構造改革を加速させる方針です。2026年以降は二桁成長を目指し、2045年までに高所得の先進国入りを目指しています。
チン首相は、ベトナムと日本の協力には大きな潜在力があると指摘し、いくつかの重点方向を示しました。
首相は、双方の地方が互恵を基盤に、それぞれの強みやニーズを主体的に生かすべきだと述べました。多くのベトナムの省は資金、技術、裾野産業を求めている一方、多くの日本の都道府県は労働力不足や高齢化、新たな成長の原動力の確保といった課題に直面しています。
また首相は、企業と人々を協力の中心に据え、主役であり恩恵を受ける主体として位置付ける必要があると強調しました。さらに地方行政機関に対し、企業同士の連携や投資を後押しする環境整備に注力し、人々が「より良い雇用、より高い収入、より良い技能」を得られるようにする政策を重視するよう求めました。
文化・人的交流は長期的な基盤であり続けるべきだとし、両国の地方間で文化的なつながりや観光協力、相互理解を深めるための具体的な取り組みを提案するよう促しました。
イノベーションとデジタルトランスフォーメーションを新たな成長の原動力として発展させるべきだとし、デジタル技術、AI、スマートシティ、スタートアップ支援、研究開発センター分野での協力を呼びかけました。さらに、日本がこれらの分野での経験を共有し、AI、モバイルインフラ、半導体など重点分野の政策づくりを含め、ベトナムの地方や企業のイノベーション・エコシステム構築やデジタルガバナンス能力の向上を支援することに期待を示しました。
首相は、グリーン変換と気候変動への適応を一層強化する必要があると述べ、グリーンインフラ、都市の洪水対策、廃棄物・排水処理、気候変動に強い農業、再生可能エネルギーなどの分野での協力事業を提案しました。
また、高市新首相の「働いて、働いて、働く」という発言を歓迎し、ベトナムが日本の地方や投資家と共に歩む用意があることを改めて表明しました。
チン首相は、日本の地方や企業に対し、ベトナムへの信頼を維持し、協力をさらに深め、共通の繁栄と包括的戦略的パートナーシップの発展に貢献するよう呼びかけました。そして、今回の第1回ベトナム・日本地方協力フォーラムが、今後の協力に向けた重要な節目、そして「新たな触媒」となることへの期待を表明し、「誠実さ、親愛、信頼、実質性、効果、互恵」という指導方針に沿った協力を強調しました。