グリーン成長への舵取り
ベトナムは、グリーン成長を中核的な発展の指針と位置付け、10年以上にわたり一連の政策を実施してきました。科学技術省によりますと、全国に4,000以上あるイノベーティブなスタートアップのうち、約200~300社が再生可能エネルギー、環境技術、持続可能な農業、または循環型経済に取り組んでいます。
科学技術省傘下の国家スタートアップ・技術起業庁のファム・ホン・クァット長官は、長期資本へのアクセスに依然として課題があるものの、グローバルなグリーン基準に沿った生産モデルへの転換需要が新たな成長機会を生み出しているといいます。多くのスタートアップが、グリーンエネルギー、廃棄物リサイクル、グリーントランスポート分野のプロジェクトで100万~500万ドルの資金調達に成功しています。気候変動による損失が毎年GDPの約3.2%に相当する中、グリーン・トランスフォーメーションは、特に農業、エネルギー、加工産業、建設といった高排出分野において、発展への投資と見なされるべきだとしています。
世界的に見ても、グリーン技術の有効性を示す事例が各国で見られます。ケニアはAIを活用して電力網の需給調整や災害警報を行い、中東のアラブ首長国連邦(UAE)は、厳しい気候課題への対応としてイノベーションを持続可能な道筋としています。
UAEのバデル・アルマトルーシ駐ベトナム大使は、UAEがスマート農業モデルや水耕栽培、関連ソリューションの推進に取り組んでいると強調しました。これらの経験は、AIの活用が各国の持続可能な発展への道のりを短縮できることを示しているとしたうえで、成功している国々に共通するのは、グリーン戦略の中心にテクノロジーを据えている点だと述べました。
グリーン成長の先進国の一つであるデンマークは、技術革新が排出削減と成長の両立を可能にすることを示しています。ベトナムとデンマークは2011年にグリーン戦略的パートナーシップを締結しました。また、多くの国際企業がベトナムをグリーン投資の有望な地と見なしています。ビンズオン省でのLEGOグループによる13億ドル規模のカーボンニュートラル工場プロジェクトは、ベトナムがグローバルなグリーンサプライチェーンへの一層の参画可能性を示すものです。
重要なテコ
ベトナムは、行政手続きの簡素化、投資コストの削減、クリーンエネルギー利用の促進を通じて、グリーン・トランスフォーメーションを加速させています。その中で、官民パートナーシップ(PPP)が重要なテコとなっています。グリーン成長とグローバル目標2030(P4G)サミットはその好例で、技術・財務アドバイスやパートナー連携を通じて初期段階のスタートアップを支援しています。ベトナムはP4Gの主体的なメンバーであり、これまでに再生可能エネルギー、循環型経済、環境保護分野で12件の協力プロジェクトを実施し、グリーンビジネスの国際リソースへのアクセスを後押ししています。
しかし、潜在力と現実の間には依然として大きな隔たりがあります。グリーン技術は現在、導入が容易な分野に主に集中しており、最大の排出源である重工業では、クリーン技術による排出処理はわずか11%程度にとどまっています。これには、イノベーション、グリーン投資、多国間協力モデルの一層の連携が求められます。この隔たりはまた、ベトナムがより先進国の実用的なグリーン技術ソリューションへのアクセスを拡大する必要性を示しています。
多くの国際パートナーが、実践的な技術ソリューションでベトナムを支援しています。日本は、都市化が進む地域や排水インフラが未整備の地域に適した廃棄物発電技術や浄化槽排水処理システムを導入しています。ベトナムでは、バクニン省の廃棄物発電プロジェクトやハロン湾の浄化槽システムが、環境分野におけるPPPモデルの実現可能性を示しています。日本はまた、太陽光パネルや電子廃棄物からのプラスチック・金属リサイクル技術も推進しており、AIを統合したGOSAT衛星は、パリ協定に沿った排出データの透明性向上に貢献しています。
国連工業開発機関(UNIDO)は、洪水、干ばつ、海面上昇、生物多様性の喪失に苦しむ地域社会が存在する限り、持続可能な発展は実現できないと警鐘を鳴らしています。UNIDOは、ベトナムで約1,300万ドル規模のプログラムを実施し、グリーン産業、持続可能なサプライチェーン、クリーン技術に注力しています。同時に、「AIM Global – AI Alliance for Industry and Manufacturing」は、AI分野での国際協力、知識共有、技術移転を拡大し、グリーン転換に新たな推進力を与えています。
国内では、国家スタートアップ・技術起業庁が「グリーンスタートアップマップ」やインパクト測定フレームワーク、財政支援メカニズムの構築を提案しています。科学技術省は、グリーン・ベンチャーキャピタルファンド、グリーンスタートアップ取引所、税制優遇、融資手続きの改革などの手段を検討しています。グローバル・グリーン成長研究所(GGGI)の専門家は、ベトナムが再生可能エネルギーインフラ、エネルギー効率の高いデータセンター、AI人材育成、データガバナンスフレームワークの開発を優先すべきだと指摘しています。これらはグリーン技術エコシステムの基盤要素です。グリーン技術は、主要な排出分野で大規模に展開され、デジタル倫理に沿ったAIガバナンスとともに推進されてこそ、真の効果を発揮します。しかし、こうしたソリューションの成果を引き出すには、制度・技術・市場を結びつける一貫したエコシステム構築が不可欠であり、断片的なプロジェクトベースの取り組みでは不十分です。
イノベーション、スタートアップ、協力こそが、環境課題の解決と循環型経済推進の鍵だ。
ホアン・ミン
科学技術省副大臣
さらに、ベトナムにはグリーンスタートアップを育成する包括的な政策枠組みが求められています。グリーンサプライチェーンモデルの構築や協力強化は、ベトナム企業が自信を持って国際市場へ進出する後押しとなるでしょう。
科学技術省のホアン・ミン副大臣は、「イノベーション、スタートアップ、協力こそが、環境課題の解決と循環型経済推進の鍵だ」と改めて強調しました。テクノロジーがネットゼロ実現への扉を開く鍵となる今、ベトナムは投資するだけでなく、グリーンソリューションの応用・イノベーション・拡大においても主導的役割を果たす必要があります。