伝統を活用したグリーンツーリズム創出を

現代において、先住民の文化遺産は、グリーンツーリズムの創出や持続可能な発展を促進するための重要な内発的資源として位置づけられています。この取り組みは、日々の暮らしやその営みの美しさを守り、独自の体験を生み出す地域コミュニティ自身が主導しています。

バクニン省のドー寺院水上舞台でクアンホー民謡を披露するドー寺院クアンホー民謡クラブ(写真:バオ・ロン)
バクニン省のドー寺院水上舞台でクアンホー民謡を披露するドー寺院クアンホー民謡クラブ(写真:バオ・ロン)

文化が伝統遺産のブランドを定義する「遺伝子」と見なされるならば、コミュニティの価値こそがこの「遺伝子」を生き生きと保ち、世代を超えて受け継がせる役割を果たしています。

伝統の火を絶やさないために

伝統的な文化的価値を求める傾向が高まる中、遺産は博物館や書物の中だけでなく、地元の人々の労働や誇りの中に息づいていることが示されています。地域住民の日常そのものが観光客を引きつける文化的魅力であり、グリーンツーリズムを形づくる出発点となっています。

ミー・タン漁村(フエ市ダンディエン社)はその一例です。タムザン潟に寄り添うこの古い漁村は、霧に包まれた夜明けの静けさと手つかずの美しさをたたえ、遠方からの訪問者を迎えています。グエン・ティ・ズーさんのような女性たちは、小柄な体で広大な水面に向き合いながら生涯を漁に捧げ、この土地の「魂」となってきました。

この地での暮らしは、単なる生計手段にとどまりません。家族や村の伝統を守り、漁業を途切れさせることなく継承しながら、観光という持続可能な発展の道を切り開いています。観光客は写真撮影だけでなく、ボートを漕ぎ、祖先から伝わる潟の知恵や体験談に耳を傾けます。

家族の観光用ボートの上で、ズーさんは、「私たちは水の上で育ち、潟の浅瀬も深みも知り尽くしています。ボートがどこへ行っても、季節ごとの植物や魚、地名にまつわる歴史などをお客様にお話しできます。皆さん、とても熱心に聞いてくれます」と語ります。

ズーさんのような地元ガイドが語る素朴で誇り高い物語は、魅力的な伝統文化観光ツアーを生み出しています。コミュニティの生き生きとした存在感は、観光が発展しても伝統的な暮らしが消えるのではなく、大切にされ、生活の糧となっていることを示しています。

一方、ホーチミン市タインアン社のティエン・リエンでは伝統的な製塩業が根付いています。ここではグエン・ヴァン・ドイさんのような塩職人が塩田に人生を捧げてきました。

ドイさんは、「乾季の半年間は一年で最も忙しい時期です。最近では観光客も訪れるようになりました」と語ります。

かつて市場競争によりティエン・リエンの製塩業は存続の危機に瀕しましたが、地元コミュニティは伝統産業を観光商品へと転換する新たな道を見出しました。サービス業に転向するのではなく、塩作りの汗と努力を生きた博物館へと変えたのです。観光客は地元住民の案内で、土を運び、水を引き、塩をかき集めるの手作業の工程を体験し、コミュニティが守る物語や仕事、地域文化への理解を深めています。

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バクニン省ナムズオン社、チャイラム協同組合のチュー麺生産施設(写真:バオ・ロン)

文化体験の価値を高める

地域文化に根差した素朴な物語は、グリーンツーリズムの確かな基盤となっています。多くの若い旅行者にとって、真に魅力的なのは、飾らない地域の暮らしそのものです。

ハノイ在住のグエン・チュン・ドゥックさんは、「旅先で地元の人々と仕事や暮らし、習慣について話すうちに、文化は記憶ではなく、今も変化し続ける生活の一部だと実感しました」と語りました。

こうした背景から、観光を国家ブランドとして位置づけ、文化的価値を体系的に磨き上げる戦略の重要性が浮かび上がります。

バクニン省では、無形文化遺産であるクアンホー民謡を中核に据え、観光ブランドの確立を進めています。同省は、クアンホーが最も本来の姿で息づく場として、カウ川の渡し場という原風景に立ち返りました。早朝、川辺に霧が立ちこめる中、小舟が静かに客を待ち、男女の歌い手が伝統衣装に身を包み語り合います。その柔らかな笑い声が、キンバック地方ならではの詩情を漂わせています。

舟が岸を離れると、観光客は求愛形式そのままのクアンホーを体感します。そこにあるのは「演出された公演」ではなく、文化が日常の中で生き続けている姿そのものです。

ホーチミン市から訪れたグエン・ミン・アインさんは、「休暇というより、祖父母が語ってくれた昔話の中に入り込んだようでした」と振り返ります。

現在、バクニン省は観光ブランドを4つの戦略的柱で構築しています。クアンホー民謡(地域の魂)、伝統工芸村(アイデンティティ)、農村エコツーリズム(グリーンで持続可能な観光商品)、伝統祭り(年間を通じた観光資源)です。この組み合わせが統一されたブランド戦略を生み、無形文化遺産の価値を高めています。

この組み合わせの好例が、ディン・フオン・ナムさん(ガーデン・ベト・エコツーリズムエリア、チュー区)のような若手投資家のモデルです。ナムさんは、コンクリートのリゾートを建てるのではなく、緑豊かなオープンスペースを創出し、ハイテク農業と伝統文化を融合させています。このエコツーリズムエリアでは、来訪者が安全な農産物を味わいながら、伝統的な民俗遊びも体験できます。このモデルは、保全と発展の調和を実現し、河川沿いのエコツーリズムや伝統工芸村サービスの品質の向上を促進しています。

さらに、バクニン省の観光業界はデジタルトランスフォーメーションを推進し、スマートツーリズムの広報活動、デジタル観光マップの構築、史跡や工芸村でのQRコード活用、クアンホー民謡のデジタル音声・映像による紹介システムの導入などを進めています。これにより、観光客は情報に簡単にアクセスでき、伝統豊かなこの地に現代的な印象も与えています。

ベトナム観光の真の魅力は、地域文化の奥深さにあると言えるでしょう。コミュニティが生計の重荷から価値ある体験へと変貌したことは、文化の保存がグリーンで持続可能な経済発展の内発的資源であることを証明しています。人々が祖先の遺産に参加し、恩恵を受け、誇りを持つとき、彼らこそが最強の「守り手」となります。これこそが、ベトナム観光が世界地図上で違いを生み出し、伝統的価値が大切にされ、持続的に発展する道なのです。

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