2050年までのネットゼロ実現という国家の公約や、近年相次いで打ち出された党の画期的な決議を背景に、ベトナム企業におけるデジタル転換とグリーン転換の同時推進が力強く進められており、経済の持続的成長を支える原動力となっています。
価値の向上
ベトナム商工会議所(VCCI)のホアン・クアン・フォン副会頭によりますと、デジタル転換とグリーン転換の同時推進は、ベトナムが迅速で持続的かつ包摂的な成長を実現するための戦略的な原動力となっています。デジタル技術やスマートエネルギー管理システムの導入により、企業は運営コストを10~15%削減し、生産性を20%向上させ、二酸化炭素排出量を毎年5~8%削減することが可能となります。これにより、持続可能な開発に関する国家公約の実現や、2050年までのネットゼロ目標の達成にも貢献するとしています。
実際のところ、企業や経済の成長が真に持続可能なものとなるためには、生産性、技術、イノベーションに重点を置いたデジタル転換とグリーン転換の同時推進が不可欠です。
党中央政策戦略委員会傘下の科学技術・イノベーション・デジタル転換局のグエン・ホン・ヒエン局長も、企業にとってデジタル転換は業務効率の向上、コスト削減、市場拡大、顧客体験の改善につながる一方、グリーン転換はエネルギーの節約、排出削減、資源の最適化を促し、国際市場で求められる厳格なESG(環境・社会・ガバナンス)基準を満たす助けになると述べました。
国家レベルでは、デジタル転換とグリーン転換の同時推進が競争力強化の機会を広げ、地域におけるスマートでグリーン、かつデジタルな製造拠点として発展するための条件を整えるものとなっています。こうした要素は、安価な労働力ではなく、生産性、技術力、環境責任に価値の源泉が置かれる新たなサプライチェーンにおいて、ベトナムが飛躍を遂げるための基盤を形成しています。
2030年までに、ベトナムはデジタル競争力でASEAN上位3か国、世界上位50か国に入ることを目指す。
2024年12月に発出された党中央政治局の決議第57号は、科学技術、イノベーション、デジタル変革の発展を最優先事項かつ生産性向上とデジタル移行を支える主要な推進力と位置付けています。
同決議は、2030年までにデジタル経済がGDPの少なくとも30%を占め、40%超の企業がイノベーション活動に参画し、ベトナムがデジタル競争力でASEAN上位3か国、世界上位50か国入りを果たすという目標を掲げています。
2025年5月に発出された政治局の民間部門発展に関する決議も、デジタル転換とグリーン転換を通じて民間部門の成長を促進し、知識基盤型で持続可能な発展モデルを目指すという方針を示しています。
さらに、最近公表された第14回全国党大会の草案文書でも、党はこうした方向性を一層強化し、科学技術、イノベーション、そして国家的なデジタル転換を原動力とする新たな成長モデルの構築が必要であることを強調しています。
これらの文書ではまた、デジタル、グリーン、エネルギー、人材の4分野における転換を支援し、資源を誘致するための制度や政策も明確に示されています。こうした動きは、ベトナムが変革を遂げ、既存の強みを生かしながら、世界のバリューチェーンの中でベトナムの価値を着実に高めていこうという方向性を鮮明に示しています。
持続可能な成長の推進
しかし、多くの企業からの指摘によりますと、言葉と行動の間には依然として大きな隔たりがあり、デジタル転換とグリーン転換の同時推進を妨げるボトルネックとなっています。課題としては、経営層の戦略的認識の不足、イノベーション思考の欠如、そして評価指標の整備が進んでいないために、二重転換への投資効果を正確に測定しにくいことなどが挙げられます。
さらに、財政・技術・経営面のリソースが依然として限られており、デジタル転換やグリーン転換に対応できる人材も不足しています。また、多くの企業では、国際的な環境基準やトレーサビリティ基準に合致しない旧来の規制を依然として適用しているのが現状です。
ハイフォン市のナムディンヴー工業団地の投資主体であるサオドーグループのチャン・トー・ロアン副会長は、一部の企業がアメリカやEUの基準を満たす新品プラスチックペレットを輸入しているにもかかわらず、現行の規定ではそれが再生製品と分類されるため、投資認可が下りないケースがあると指摘しました。これにより、ナムディンヴー工業団地ではリサイクル関連プロジェクトの誘致が難しくなっているといいます。
こうした現状は、デジタル転換とグリーン転換の取り組みが依然として部分的かつ不整合な状態にあることを示しており、政策と実施の間にある隔たりを埋め、二重転換をスローガンにとどめず、実際に経済の持続的成長を牽引する原動力とすることが急務であることを浮き彫りにしています。
企業はこのプロセスの中心に位置づけられるべきであり、革新的な解決策と包括的・一貫した戦略による支援が必要です。政策を打ち出す際には、企業団体や企業からの意見を十分に聴取し、実施段階での実効性を確保することで、手続きの遅れや投資意欲の低下を防ぐことが求められます。
さらに、政府は基準、デジタルインフラ、金融政策の早急な整備、グリーンファイナンスへのアクセスを促進するとともに、環境に優しいクリーンエネルギーや持続可能な開発プロジェクトの実施を企業が進められるように支援する必要があります。
また、グリーンでスマート、かつ持続可能な成長を実現するための鍵となるデジタル技術や人工知能(AI)分野の質の高い人材へのアクセスを企業が得られるよう、引き続き良好な事業環境の整備と企業支援を行うことも求められます。
企業にとっては、規模や資源、技術レベル、財務状況が異なるため、すべてに適した単一のモデルは存在しません。それぞれが自社に合った道を見出す必要がありますが、明確な戦略、具体的なロードマップ、実行の規律が不可欠となります。
変革はまず、デジタル転換とグリーン転換に対する認識と意識の改革から始まらなければなりません。あらゆる規模の企業において、イノベーション精神と変化への対応力を育むことが求められます。そのためには、財務の透明性、法令順守、ガバナンス能力の強化、そして技術力の向上が不可欠です。さらに、企業同士が連携し、資源を共有し合うことで、イノベーションの過程で相乗効果を生み出し、つながりと発展を促す環境を整える必要があります。
こうした取り組みは、ベトナム企業が国内で持続可能な成長を実現するだけでなく、国際市場で競争力を発揮し、より深く参画するための重要な原動力となります。