ホーチミン市 環境にやさしい持続可能な産業を目指して

世界的な構造変化が産業の姿を大きく変えつつあり、ホーチミン市は競争力を維持するための対応が求められています。こうした状況を踏まえ、同市はイノベーションやハイテク技術、そしてデジタルフォーメーション(DX)とグリーントランスフォーメーション(GX)の同時推進を軸に産業振興を進め、持続可能な成長を目指す必要があります。

ホーチミン市タン・トゥアン輸出加工区にあるJukiベトナム有限会社で工業用ミシン部品の製造を行う従業員
ホーチミン市タン・トゥアン輸出加工区にあるJukiベトナム有限会社で工業用ミシン部品の製造を行う従業員

ホーチミン市は、南部主要経済地域および国全体の経済発展を牽引する重要な役割を担っています。同市の産業の進展は、特に世界的に第四次産業革命が加速する中、地域発展の原動力となっています。

産業変革は不可避の流れ

これまで、同市の産業団地や輸出加工区は、投資誘致、工業生産の発展、雇用創出、技術ノウハウや先進的な経営手法の移転、輸出価値の向上、そしてグローバルな生産ネットワークやバリューチェーンへの段階的な参画といった目標を概ね達成してきました。

こうした成果は国家財政への貢献につながるとともに、同市の先進的な産業化に向けた社会経済発展を後押ししています。

一方、近年の産業団地の発展には課題も浮き彫りになっています。投資効率は伸び悩み、付加価値の創出は限られ、資源利用は非効率で、労働集約型産業が依然として主流です。また、技術インフラや社会インフラも十分とは言えません。

現在、複数の産業団地が運営期間の半ばに差し掛かっており、2041年以降には国家との50年の土地賃借期間が満了する団地も出てきます。

その結果、多くの企業が生産拡大や設備・技術の刷新に慎重になっており、知的集約型や先端科学技術を要するプロジェクトの誘致に苦戦する工業団地も見られます。

ホーチミン市開発研究院によりますと、全国の産業発展と同市の産業発展を比較した場合、近年は全国の産業成長の方が同市を上回っているということです。

このことは、新たな産業発展の方向性を打ち出す必要性を浮き彫りにしています。今後、同市は産業構造の高度化を優先し、エコ産業団地やハイテクパークの整備を進めるとともに、波及効果をもつハイテク分野を積極的に誘致し、産業横断的な連携を生み出すことが求められます。

ホーチミン市開発研究院の元院長、チャン・ホアン・ガン准教授は、同市が長年にわたり産業変革を進めてきたと指摘します。従来の労働集約型・資源集約型産業に依存するのではなく、ハイテク・先端・環境配慮型産業へとシフトし、温室効果ガス排出の削減を目指しているといいます。

産業変革を支えるエコシステムの構築

持続可能な成長を実現するため、専門家らはホーチミン市が産業発展において選択的なアプローチを採用し、付加価値の高いハイテク分野に注力すべきだと強調しています。

同市は、イノベーション、躍動性、創造性を基盤とした産業発展を優先し、インダストリー4.0の成果を活用してスマート製造を推進し、南部主要経済地域および全国の産業を牽引する地位を確立することが求められます。

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ホーチミン市ハイテクパークにおけるDatalogic Viet Namの生産風景

トニー・ブレア・グローバル変動研究所のベトナム事務所代表、リッチ・マクレラン氏は、ホーチミン市が経済発展の重要な岐路に立っており、産業の優先分野に関する戦略的決定が今後の将来を左右すると強調しました。

電子・ハイテク製造、デジタル経済、ITサービス、再生可能エネルギーやグリーン技術、グリーンファイナンスといった分野に注力することで、同市は競争優位性を活かし、グローバルサプライチェーンへの一層の参画が可能となります。

ホーチミン市は、産業基盤をハイテク産業の全国的な中核、そしてイノベーションの中心地へと転換することを目指しています。

これを実現するために、第98号決議(2023年6月24日付国会決議第98/2023/QH15号「ホーチミン市発展のための特別な仕組みと政策の試行」)実施諮問評議会議長のチャン・ズー・リック博士によりますと、同市は三つの柱からなる変革のエコシステムを構築する必要があるということです。

第一は、適切で透明性が高く明確な制度的枠組みであり、国家が政策支援を通じて推進力となること。

第二は、輸送インフラやデジタルインフラなど、転換を支えるために必要な基盤整備を進めること。

第三、同様に重要なのが人材であり、半導体、AI、IoTなどの分野を発展させるため、高度な人材を育成すること。

これら三つの柱が一体となって、迅速かつ持続可能な産業変革を可能にするエコシステムを形成します。「ホーチミン市は“何を作るか”ではなく、“どのように作るか”、すなわち新しい技術で生産することに注力すべきだ。それこそがグローバルバリューチェーンで重要なのだ」とチャン・ズー・リック博士は強調しました。

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