協同組合や企業の活力、そして市の農業部門による強力な支援により、ハイテク農業モデルは目覚ましい成果を上げており、地域農産物の価値と競争力を高めています。
農業分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)のモデル
ホーチミン市ロンチュオン区にあるトゥアン・ゴック農業協同組合は、長年にわたり水耕野菜の生産過程にデジタル技術を積極的に導入してきました。同協同組合は、経営面での技術革新に注力するだけでなく、循環型農業の原則も取り入れ、持続可能性の推進にも努めています。
水耕栽培で使用したココナッツファイバーなどの資源を再利用することで、トゥアン・ゴック協同組合は生態効率を高め、農業廃棄物の削減にも成功しています。DXと循環型農業の融合により、同組合はホーチミン市における持続可能な農業生産のモデルとして注目を集め、経済発展と環境保護の両立に貢献しています。
トゥアン・ゴック農業協同組合のラム・ゴック・トゥアン代表によりますと、同協同組合は近年、生産過程の最適化、製品品質の向上、市場ニーズへの対応力強化を目的に、DXの取り組みを加速させているといいます。
具体的には、同協同組合は水耕野菜栽培モデルにIoT(モノのインターネット)センサーシステムを導入しています。これらのセンサーは湿度、温度、光量、水中の養分濃度などの主要な項目を常時監視し、収集されたデータは自動的に分析されます。これにより、オペレーターが最適な生育環境を維持するための迅速な調整が可能となっています。
さらに、同協同組合は管理ソフトウェアを活用し、植え付けから収穫、流通までの生産過程を監視することで、資源の最適化、廃棄物の削減、生産性の向上を実現しています。
製品にはQRコードが付与されており、消費者はその生産元を迅速に確認することができます。また、組合員のデジタルスキル向上のための研修プログラムも実施し、全員がDXの流れに効果的に対応できる体制を整えています。
ラム・ゴック・トゥアン代表によりますと、トゥアン・ゴック協同組合は今後、作物や環境条件、生産効率に関するデータベースの構築も進めており、将来的には予測や栽培工程の最適化を図ることで、精密かつ持続可能な農業生産を目指しているということです。これらの取り組みにより、安全でトレーサビリティの確保された製品を通じて競争力の向上と消費者の信頼強化をねらいます。
現代的な農業分野を目指して
ビンズオン省およびバリア=ブンタウ省との合併後、ホーチミン市の農業部門は農業経済の再構築と高度化を目指し、DXを最優先課題としています。
これは、経済構造の転換と農業生産のハイテク化を推進するための主要な解決策の一つと位置付けられています。市は、野菜、花、観賞植物、豚、エビ、観賞魚、果樹などの主要作物や品目を中心に、DXの取り組みを重点的に進めています。
専門家によりますと、ホーチミン市はDXを中核的な課題と捉え、技術基盤に基づく成長を目指しているということです。市は引き続き、生産性、品質、効率の向上と環境負荷の最小化を両立させるため、ハイテク農業や自動化農業の導入拡大を進めています。
同時に、ハイテク農業およびデジタル農業の発展に向けた基盤づくりとして、農業分野への企業投資の誘致にも力を入れています。
農業分野では現在、インターネットを活用したデータ収集や農場管理ソフト、資源の最適化ツールの導入を通じて、従来型の農業からスマートかつデータ主導の生産体制へと移行が進められています。すでに複数の大手企業が、生産、流通、販売の各工程においてハイテク技術や情報システムを導入しています。
しかし、DXへの道のりには依然として課題が残されています。農業生産の多くは小規模であり、先端技術の導入が難しい上、農業従事者の多くはITやDXに関するスキルが不足しています。また、デジタルシステムやトレーサビリティ導入の初期投資コストも高く、特に発展途上の農村部では小規模農家にとって大きな経済的障壁となっています。
専門家は、農業のデジタルトランスフォーメーションを成功させるためには、人材の質の向上が不可欠であると強調しています。また、農民や協同組合が土地を集約し、専門的な生産区域を形成することを促進し、包括的なデータプラットフォームの整備を進めるとともに、農家が技術投資のための融資を利用しやすい環境を整備することが必要だと指摘しています。
ホーチミン市ハイテク農業区管理委員会のファム・ディン・ズン委員長によりますと、国内外の事例からも、高付加価値の農産物を生み出すためにはハイテク農業の発展が避けられない潮流であることが示されているということです。
ホーチミン市は、科学技術を生産に応用することを基盤としたハイテク農業の戦略的ビジョンを掲げており、高品質な農産物の生産だけでなく、エコツーリズムの促進も目指しています。ハイテク農業が創出する価値は、農家に実質的な利益をもたらすだけでなく、市の持続可能な社会経済成長の強化にも寄与しています。